著者︰デービッド・アトキンソン
出版︰東洋経済新報社
昔に一度読んだのですが、改めて読み直したいなと思い、セールになってたこともあり、アマゾンでポチッとしました。
本書はデービッド・アトキンソンというゴールドマン・サックスのパートナーから国宝などの文化を修復する小西美術工芸社の社長になられた方です。
色々と勉強になることが多かったのと反省も含めてメモしておきたいと思います。
1.なぜ「観光」なのか。
結構色々なところで観光!観光と言われていますが、これは単純にオリンピックが決まったからとかそういう話ではないんですよね。
国としては少子高齢化に関する経済力の低下が予測できているので、それに対して何かしら対策をうたなければならない。
というのも、『GDPと人口には相関関係がある』と言われています。
(※『一定の経済の基礎ができた先進国』という前提条件があります)
つまりは、人口減少が起こる=GDPが低下するため何らかの対応をしていかないといけません。
(まあ、大体今の国の政治は人口減少と少子高齢化に対する対応策ですよね)
その上で、経済力を上げていくための政策としては以下の3つがあがります。
- 移民政策
- 生産性の向上(ITの活用や女性の起用、働き方改革など)
- 短期移民(外国人の観光客を呼び寄せる)
1.移民政策はなかなか踏み出すのが難しい。2.生産性の向上はどこまで可能か判断が難しい。ということで、3.短期移民(観光客を呼び寄せる)のに注力していくべきだというのが著者の持論。
さすが元コンサルタントということで、この辺が凄く分かりやすかったです。
まあ、この前の移民についての法案可決を見ると、上記の1~3について国としては全てにおいて対応していきたいというところだと思います。
賛否両論はあれど、個人的には移民政策についても徐々に開放していくしかないのかなと思います。
そのためには、同時に「他社への理解」を醸成することが必要不可欠だし、そのための「教育」も合わせてする必要があるでしょう。
2.観光立国とは
観光立国自体に明確な定義はないですが、以下の2つを指標にするといわれています。
- 観光客到着数
- 国際観光収入
いずれも日本は世界の中では20位以内にも入っていません。
また、成功した「観光立国」(上位ランキングの国)を分析すると4つの条件が必要不可欠。
- 気候(厚い地域、寒い地域があること)
- 自然
- 文化(伝統も現代も含む)
- 食事
実は、日本はいずれの条件も満たしているため、『観光立国』にふさわしいポテンシャルを持っているということになります。
『これらをセールスポイントにしながらいくつもの色を積み上げていく』ことが大切になっていきいます。
この分析は凄いですね。
自分も海外旅行は大好きなので、よく旅行に行くのですが、確かにこれらを重要視しているなと。
若い頃は特に、「文化」と「気候」を重要視していましたが、最近は逆に「自然」
と「食事」にも興味を見出してきましたね。
なので、同じ国に訪れたとしても違った楽しみ方をするようになってきたなぁと感じました。
これは、昔(学生時代貧乏旅行)と違って少しお金に余裕が出てきたからということもありますし、昔とは違う新しい楽しみ方を探し始めたからかもしれません。
自分の体験を通じても、まさにこの通りだなと。
そう考えると外国の人からみた日本というのは魅力的な国なのかもしれません。
3.「観光立国」に必要なこと
『観光における「マーケティング」というのは単に、どこの国のどういう人に何人くらい、いつ、何を見せて、何日滞在してもらうのか、そして観光サービスにいくら払ってもらうのか、そのためには何をどう発信すればきてもらえるようになるのか、というようなことを考える。』
『観光における「コンテンツ」、すなわち外国人観光局に売ることができる商品を洗い出し、商品別にリストアップする。それらの商品を誰に、いつ、いくらで売るのかを考えて、それに見合う商品を選び、ターゲットに設定した人々にどのようなルートで発信するかを決めていく』
実際、これだけのことを国、県、各自治体がどれだけできているのでしょうか。
というよりも、それらの組織がどうかというよりも、それだけの知識とノウハウをもった人が日本国内にどれだけいるのか。
逆に、世界各国の「観光立国」がこれだけのマーケティングを行っていたのだとしたら…凄いことですよね。
日本も、観光の大学院を増やすなどそういった人材育成に力を入れていくのでしょうが。
また、観光業は輸出業に分類されるので、輸入品を買った場合にお金が出て行ってしまい観光収入にならないというのは知識として面白かったですね。
つまり、爆買だけでは日本の経済が上向きになるわけではない。
4.まとめ
今なぜ、観光業が必要なのか。
そして、そのために何をしなければいけないのか。
そういったことが凄く分かりやすく、まとめてある本でした。
また、元コンサルトだけあって数字とロジックに裏付けされた論理展開でとても納得感があり、勉強になりました。
そして何より、日本の文化を見てもらいたいという二次的な目的ではなく、冷静に観光を産業として機能させていくことが重要であるとも学びました。
台湾や韓国の観光CMも最近テレビ良く眼にしますよね。
ある意味、世界中が注目している産業の一つなのかもしれません。
観光業に携わる人や官庁などでか政策を行う人には是非呼んでほしい一冊です。