Kindleで安くなっていたのでポチッと。
池田勇人という昭和の首相の生涯を描いた作品。
自分が知る知識では、池田勇人と言えば、所得倍増計画を打ち出し、それを成し遂げ、日本の高度経済成長を創った政治家という認識。
知識としては大体合っているとは思うのですが、実際どんな人だったの?と言われると「さっぱり」といったところ。
まあ、自分の世代ではもはや「歴史上の人」って感じですかね。
個人的には、今の安倍政権の経済優先の政策というのはかなり所得倍増計画とかぶる部分があると考えており、実際のところ所得倍増計画はどのような政治及び社会の流れで打ち出されてきたのかを知りたかったというところがあり、読本。
結果、自分のイメージの池田勇人像と実際の池田勇人という人物が全然違い、かなり楽しめました。
元々、裕福な家の出身ではあるもののかなりガキ大将気質であり、エリートかと思いきや東大ではなく京大(いや、十分凄いんですけどねw)。
その後、大蔵省に入庁するものの、東大ではないため、ドサ回りをすることに。
その後29歳くらいから病気にかかり大蔵省を休職し、5年間の闘病生活の末、34歳で大蔵省に戻ったという(しかもその間に最初の奥さんを亡くしている)。
29歳から34歳と言えば、仕事でもかなり重要な時期に差し掛かる中で、かなり厳しかっただろうと思われる。
自分とあんまり変わらない年齢なので、余計にそう感じるからかもしれないけれど。
何より凄いのはそんなキャリアの空白期間がありながら、最終的に大蔵事務次官になったということ。
もちろん、運もあったかもしれないが(自分は基本的に出世は半分運だと思っているのでw)、本人の努力も相当なものだったんだろうなと。
“政治の使命とは何かと問われれば、それはやはり国民生活を引き上げることだ。すなわち、雇用を拡大して社会保障を拡充する――これが柱でなければならん。 では、これを実現するにはどうすればよいか。結局、行き着く先は経済の拡大、発展以外にはないんだよ”
この部分は安倍政権と大きく似ているところ。
自分も経済政策はとても大切だと思う。
日本は失われた20年と言われるように、経済成長が低迷してきた。
初任給が20年近く変わっていない国も珍しいんじゃないかな?
“・戦後の焼け野原からモノづくりに励んで日本は復興した。
・それに伴い国民の所得も向上し、所得が増えた分は貯蓄に回された。
・貯蓄は銀行を通じて企業に貸し出され設備投資に回ることで、生産が増大した。
・企業の生産が増大したことで、国民の所得が向上した。
こうしたプロセスを繰り返すことが、経済拡大の循環であり、政府はこの循環を促進するために、「減税と公共投資、社会構造の変化によってもたらされる弱者への社会保障を行う」というのが、池田の信念だった。”
“池田の所得倍増の骨子は、経済成長を優先することによって、福祉水準を向上させ、国民の生活を豊かにし、教育水準を引き上げ、地方を活性化し、道路等の交通インフラを整備し、さらには日本の外交的地位までを引き上げようとする野心的な取り組みだった。決して、〝エコノミック・アニマル〟と欧米諸国に揶揄されたような経済偏重の人気取り政策だったわけではない。このことを理解していない向きは、意外と多い。経済なくして、国民生活の向上なし――。”
ただ、このあたりはアベノミクスと大きく異なるところなのではないかなと。
法人を減税し、大企業が利益をあげることでトリクルダウンにより、経済成長が成しうるというところが一般的な論説だけどどうだろう。
実際に国民に還元されているのかなと思う部分はありますね。
どうも大企業偏重の経済政策なのではないかなと感じてしまいます。
まあ、経済音痴な自分の知識では「実際どうなのか」とまでは分かりませんが。
一方で、「働き方改革」や「子育て支援」、「観光事業」については一定程度評価がされるべきだとは思いますが。
池田内閣の時と時代も異なるので、一概に比較はできませんが、アベノミクスの成果が出るのは期待したいですね。