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30代共働き庶民のサラリーマンです。趣味(ファッション・読書・映画・旅行・アウトドアなど)と時々仕事についての覚え書き。

今の中国、そしてコロナ後の世界の対立とは。【読書感想】中国が世界を撹乱する


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野口悠紀雄さんの著書。


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知り合いの人がおススメしていたこともあり、 kindleでいち早く読むことに。

まあ、GWが外出自粛ということもあり、一日であっさりと読めました。

 

内容としては、中国という国に対する現状とそれに対する世界の問題意識といったところでしょうか。

中国に対しては部分的には知識や情報があったものの、それがうまく整理されていて分かりやすかったです。

また、その米中の貿易戦争についても「なるほどな~」と思うことが多くありました。

 

しかも、ちょうど「コロナ禍」での執筆(加筆)であり、これからの「アフターコロナ」を考えるうえでとても参考になりました。

 

 

 

1.コロナが私たちにつきるける問題

コロナが私たちにつきつける問題としては

中国が今後どのような国になっていくかこそが、世界が勅命している長期的な問題の本質だ。

 

基本的な問題は、中国の理念なり国家運営の基本原理が、世界をリードし、世界の標準になれるかどうかだ。つまり、未来の世界において、中国が覇権国になれるかどうかだ。これが、本書の基本的な問題意識だ。

こうした観点から人類の歴史を眺めると、つぎの2つの大きな潮流を指摘できる。第1は、古代ローマ共和国に始まり、アメリカに引き継がれてきた流れだ。自由を重視し、多民族に対して寛容な政策をとる。もう一つの潮流が、中国の官僚国家だ。中華思想の下で、異民族に対して非寛容な政策をとる。

 

分権的で自由な社会を作るのか、それとも、集権的で管理された社会を作るのかが、問われているのだ。

 

実際に、国が発表している数字においてコロナに対する対策において、中国は抑え込みに成功しています(もちろん、原因が中国であることや数字の正確性については考慮せずです)。

もしも、この抑え込みが成功しているということであれば、本書で述べられているように中央主権国家である組織とそれに伴う個人情報を含んだビッグデータの運用が、功を奏したと言えるのでしょう。

 

しかしながら、中国のような規制を敷くのは日本は難しいなと個人的には考えています。

やはり、歴史上(特に第二次大戦)において軍部の暴走があったこともあり、そういった歴史背景を踏まえた上での憲法であり、法律である以上、中国を含めた海外のような政府が個人の自由を完全に奪うことについて、手放しで賛同はできないかなと思います。

 

もちろん、有事であることもありますし、難しいところではありますが、「個人の自由」を奪うことができるような体制をとらせるほど「政府」への信頼感がないというところかもしれません(もちろん、自粛は重要だし、自粛要請とセットでの経済政策も必要だと思います…まあ自分のような外野が口で言うのは簡単ですが…)。

 

その点、ドイツのメルケル首相なんかはそういったことを理解したうえで国民への説明責任を果たしたと言えるのではないかと思います。

 

これについて、自分の現段階の考えとしては段階的にまたは情報の利用をはっきりさせた上で、ある一定の管理された社会は認めざるをえないのではないのかなと思います。

それこそ、「安全のために自由」をある程度犠牲にしていくことにはなると思いますが(行動追跡システムや街の監視カメラの設置など)。

もちろん、このあたりは議論が必ず必要になると思いますが。

 

 

2.中国経済

実際に、本書に中国のITの発展度合いが書かれていたけれど、顔認証からAI、フィンテックや信用スコアリング等々、プライバシーの観点から日本ではもちろん実行は難しいと思われる部分もあるが、圧倒的にITサービスで進んでいたことには驚きでした。

 

また、ジャック・マーのアリババといったIT産業の成長はもちろんあるものの、重工業部門は未だに国営企業であり、その企業の大きさも凄い。

 

何よりも驚いたのは、中国の一人当たりのGDPと日本の一人当たりのGDPとの比較についてです。

2014年から2023年までの年平均成長率を見ると、日本は2.6%、中国は7.8%だ。

仮にこの傾向が将来も続くとすれば、中国の1人あたりのGDPは、2032年に日本のほぼ2分の1になる。そして、中国が日本と同じ豊かさになる「Xデイ」が訪れる。それは2046年だ。これはそれほど遠い未来のこととは言えない。

もちろん、本書に書いてある通り、OECD予測では2060年になっても日本のほうがまだ高い。

 

単純に中国のほうが圧倒的に人口が多いので、GDPが大きいのは仕方ないと思っていたが、一人当たりの GDPまで抜かれるということではわけが違うなと(もちろん、日本が成長していないということもありますが。)

 

もうそこまで来ているのかと結構驚きでした。同時に、本書の指摘に日本の中国の台頭への危機感欠如とありましたが、その通りでしたw

 

ちなみに本書ではアベノミクスについては『何の意味のない金融政策』であり、『新しい産業が登場したわけではない』と厳しく指摘しており、それもその通りだなと思いました。

今回、アベノミクスの目玉である観光政策が大打撃をうけています。

ただ、観光政策自体が間違っているというよりも、観光政策頼み(金融政策も)だったところが良くなかったのではと思います。

観光政策で収入を得る一方、『新しい産業』を生みだしていかなければならないのでしょう(もちろん、経済産業省の方々は色々と考えているとは思いますが)。

 

しかしながら、横に強大な国家がある以上、日本が経済成長を捨ててそこそこの国として生きていくという選択肢は難しいかもしれないですね。

 

 

3.中国の今後

中国が覇権国家になりうるか否かを判断するキーワードは「寛容」(他民族を受け入れること)だ。古代ローマは、それによって強くなった典型例だ。現代世界では、アメリカがローマの考えを引き継いだ。アメリカは世界中の能力のある人々に成功のチャンスを与え、それによって発展してきた。中国はその対極にある。中国は「寛容」の条件を満たしていないので、覇権国家になりえない。しかし、アメリカも中国もこれらの点に関して変質しつつあるのかもしれない。

 

中国の今後については、経済の発展に伴い民主化が進むと思われたが、そうでもない。

 

このままいくと、『データ共産主義が実現し、究極のデジタル独裁者がうまれるか』と本書では警鐘を鳴らしている。

 

正直、中国と米国の覇権争いがどのような決着になるかは分からないけど、少なくとも世の中の趨勢が、今の中国のような言論の自由がない独裁国家であってほしくないとは思う。

 

ウイグル族への弾圧や香港でのデモ弾圧のようなことが当たり前の世の中になるべきではないと思う。

 

日本自体も中国と米国いう強大な国家に挟まれている以上、このままでいられるわけではないでしょう。

 

 

4.まとめ

アフターコロナにくる世界というのがどういうものなのか(もちろんコロナを封じ込める「今」も大切ですが。)。

間違いなく、中国と米国という2大国家のどちらが主導権を握るのかという問題に焦点があたってくると思います。

 

特に中国はコロナ収束後に各国に対してどのような態度をとるのか。

気になるところではあります。

個人的には中国のような言論の自由がない管理社会は勘弁してほしいなとは思っています。

 

 

直近の中国及び米国との対立を学びたい方はぜひどうぞ!