緊急事態宣言が一部地域で解除され、また少し動きが出てくるのでしょう。
アフターコロナについて、色々予測がされていますが、今回はその1冊(知り合いが紹介をしていてちょっと興味がわいたというのもありますが)。
結構予想していた内容とは違っていましたがなかなか勉強になりました。
本書の著者は企業の再生の第一人者であり、企業の再生に対して行政、企業がどのようにしていくべきなのかが論じられています。
1.コロナとの闘いについて
新型コロナウイルスとの闘いについては収束の兆しが見えてきていますが(5/17現在)、このまま完全に収束とはいかないのではないかと考えています。
新型コロナウイルスとの闘いはグローバルスケールで長期戦の様相である。ほかのウイルス性疾患のパンデミックと同様、一定程度の集団免疫の形成とワクチンや抗ウイルス剤の開発と普及で爆発的な感染と重症化をコントロールできる状況になるまで落ち着かないであろう。
本書に書いてある通り、一定程度感染者がいる中で、「集団免疫の形成」と「ワクチンや特効薬」が普及できるまでは完全に「通常の生活」に戻ることは難しいのではないかと思います(通常の生活が=今までの生活となるかどうかは分かりません。)。
また、今回のコロナウイルスにおいてはやはり「生命」と「経済」の両方を優先しなければならず、そこの線引き及び対策が難しいと感じています。
「生命」が優先されるべきは最もなのですが、「経済」が停滞すると「経済」によって「生命」が危機に追いやられる人が出てくるということ。
今回の本書においては新型コロナに対する医療や予防などの「生命」的な対策というよりも、「経済」的な対策について論じられております。
そして、経済対策についても守るべきものは2つだと明確にしています。
- 財産もなく収入もない人々の生活と人生
- システムとしての経済
これはその通り、ですよね。
実際、本書で述べられている通り、緊急に作った緊急の対策としては上記2つに対応しており、限られた時間の中で頑張って作成した対応策と言えるでしょう。
2.L→G→Fの順番で経済は危機に陥る
ここが凄く分かりやすかったですね。
よく、今回のコロナショックがリーマンショックと比較されるのですが、本書では以下のように分析をしています。
時間軸的にはL(ローカル)な経済圏の中堅・中小のサービス業が打撃を受け、次にG(グローバル)な経済圏の世界展開している大企業とその関連の中小下請け企業へと経済収縮の大波が襲っている。この段階で衝撃を受け損ねると、次は金融システムが痛んで今度は金融危機のF(ファイナンシャルクライシス)の大波が起きかねない。
リーマンショックの場合は金融危機のFから始まった経済危機であり、今回のリーマンショックはその逆であるということ。
つまり、L(ローカル)→G(グローバル)→F(ファイナンシャルクライシス)の順に危機が起きていく。
これは、なるほどなと。
経済危機というと金融危機と企業への打撃(実体経済ですかね?)を一緒に考えてしまうところが多く、さらにローカルとグローバル企業で分けて考えるところは勉強になりました。
確かに、今回のコロナショックで株価はそこまで落ちておらず、かなり疑問ではありました。
もちろん、企業の決算が出れば株価もダメージを追うでしょうが、そこに「時間差がある」ということなのでしょう。
ちなみにL型産業のポイントとしては、
- 観光、宿泊、飲食、エンターテイメント、(日配品、生活必需品以外の)小売、住宅関連などのローカルなサービス産業
- 国のGDPの約7割を占める
- 非正規社員やフリーターの多い産業
と本書では書かれています。
正直、L型産業群が国のGDPの7割を占める産業になっているとは知らなかったです(本書ではデータがないため、何が7割なのかが詳細にわからず残念でしたが)。
また、ニュースでもよく報道されている通り、中小企業は体力(キャッシュ)がないこと。
このあたりが、今回のL型産業群が一番最初にダメージを受ける理由の一つでしょう。
また、対応策の一つとして「融資」と「出資」の2つのお金が必要であるというところが、とても参考になりました。
個人的には「融資」の枠を広げて、稼いだら返すというのが資本主義的な考え方なのではないのかなと思っていた節がありました。
しかしながら、「融資」だけではやはり借金が拡大しすぎるてしまう可能性があり、そうなると将来的にじわじわと首を絞めることになってしまう。
そのため、事業継続の「つなぎ融資」と例えばリストラのための退職金などといった払いきりで返ってこない資金使途については「出資」が必要になると。
そういう意味では、今回の国の動きとしては悪くないのではないかと考えます。
しかしながら、手続きや入金についてはスピード感が足りないという指摘もあります。
この辺りは、難しいところですよね…不正で受け取ろうと人達も出てくるでしょうし。
過剰な出資は長期的に国の首を絞めてしまいますし。
この辺りは、極めて難しいかじ取りだなとは思いますが、今回においては可能な限りスピード重視で行って欲しいですね。
ただ、本書では
同時に政府が支援介入する際には思い切り大介入し、一方で危機が収束した後はメリハリの効いた鮮やかな撤収を行うこと、そして対策自体にゾンビ温存の副作用を最小化する仕組みをビルトインしておくことが重要になるだろう。
と記載がある通り、政府が支えるときは支える、危機が過ぎたら撤収するということを重要視しています。
このあたりは、さすが著者が再生のプロであるからこそでしょう。
いつまで政府が支援し、介入するか。
これも今後しっかりと明確にしていく必要があるでしょう。
3.修羅場の「べからず」集
本書では、修羅場の「べからず」集として以下の通り記載しています。
- 見たい現実を見る経営
- 精神主義に頼る経営
- 人望を気にする経営
- 衆議に頼る経営
- 敗戦時のアリバイ作りに走る経営
- 現場主義の意味を取り違える経営
- 情理に流される経営
- 空気を読む経営
自分の働いている職場はどうなんでしょう。
まあ、全てに当てはまていないとは言えないですねw
逆に言えば、コロナの対応を機に評価をあげている吉村さんなんかは、「べからず」集に当てはまっていないといえるでしょう。
実際に、吉村さんの政策がベストな政策であるかどうかは、コロナが終息した後でないと判断はできませんが、現状としては「納得感のある」政策であるのではないのでしょうか。
それに比べてちょっと国政のグダグダ感はちょっといただけないですね。
頑張っている人達(もちろん官僚や政治家も含みます)のやる気を削いでしまいます。
4.まとめ
もう少し、経済についての大きな動きを論じているかと思いましたが、意外と経営に踏み込んでまで記載されていました。
やはり根本としては、今回のコロナを機に組織の基本的な形を変えていけるかが大切になってくるなと(もちろん、コロナ前から日本経営では立ち行かなくなると言われてきていましたが)。
もちろん、それに併せて個人の行動変容も必要になってくるでしょう。
まずは自分達が「今」できることに注力していきたいですね。
今回が「TA(turn around)編」で次作が「CX(corporate transformation)編」とのことらしいですが…買っちゃうだろうなw