ちょっと仕事柄、教育関係の知識を得たいと思い題名とプライムの対象だったので、読んでみた本。
自分の見えていないものに気づかせてくれる、思った以上に名著でした。
以下、感想などをつらつらと。
1.教育とは
教育に関しての本って多いですよね。
それについて、面白いことが書いてありました。
「不思議なもので、教育という分野に関しては、まったくといっていいほどの素人でも自分の意見を述べたがるという現象がしばしばおこる」と『統計学が最強の学問である』と著者の西内氏が述べている
まさにその通りですよねw
なぜなら、みんな「教育」を体験しているから、専門的に学んでなくても語れてしまう。
これが、例えば「カバディ」だったり、「会計」だったりすると、やっていない人は語れないですもんね。
しかも、影響を与える変数が多いことと、人によって個人差が如実に出るといった理由から、これが正解という要素がないことも難しいですよね。
「子育てに成功したお母さんの話聞きたい」という欲求自体に問題がある和ではありません。しかし、どこの誰かが子育てに成功したからといって、同じことをしたら自分の子供同じように成功するという保証は、どこにもありません。
本書にある通り、こういった事態がおこることが興味深いところです。
このあたりが、親や先生方が「教育」について悩む一因でしょう。
さて、そもそも「教育」とはというところですが、教育基本法によれば以下の3つに大別されます。
- 学校教育
- 家庭教育
- 社会教育
文字通り、学校教育は学校での教育、家庭教育は家での教育、社会教育は「それ以外」のものになります。
本書では、主に「学校教育」や「家庭教育」について述べられています。
2.人生の4大出費とは?
ちょっと話はそれるのですが、最初の会社が金融系だったこともあり、金融関係のことは勉強してきました(嫌々ながらw)。
その時に、学んだことで今でも納得感があることがいくつかあるのですが、そのひとつがこれ。
『人生の4大出費とは?』
知っている人は知っていると思うのですが、『人生の4大出費』とは以下の4つです。
- 家
- 車
- 保険
- 教育
特に、今回の「教育」は最も費用対効果が高いと言われています。
それなのに「教育」を受けたことはあるけれど、効果的な「教育」について学んだことはないですよね。
というか、書いていて思ったのですが、4大出費のものすべてにおいて、自分から学ばないと学ぶ機会はない。
これはなかなか面白いですよねw
3.教育を経済学の視点からアプローチする
さて、大分横道にそれましたが…
これが、本書の主題ではあります。
どこかの誰かの成功体験や主観に基づく逸話などではなく、科学的に根拠に基づく教育を。
それは具体的にどういったことかというと、
- 決して目に見えないものを数字でし示すこと
- 原因と結果、因果関係(相関関係だけでなく)を明らかにする
です。
このあたりは、自分が小学校や中学校の時は、確かに余り語られてこなかった気がします(語られてきたのかもしれないけれど、小さかったから知らないだけかもしれないけどw)。
ちなみに本書で語られている、教育において、経済学的に効果があるものは以下のこと(自分のメモとしてなのでざっくり抜粋してます)。
①「目の前のにんじん作戦」は効果的
②インプットに「ご褒美」を与えるべき
③むやみやたらに子どもほめると、実力の伴わないナルシストを育てることになりかねない
④子供の能力でなく、努力を誉める
⑤テレビやゲームの時間をやめさせても学習時間はほとんど増えず、勉強をみている、または勉強する時間を決めて守らせているのが効果が高い
⑥反社会的な行為については友人からの影響を受けやすい
⑦もっとも収益率が高いのは、就学前教育(幼児教育)であり、認知能力ではなく、非認知能力(生きる力、自制心・やりぬく力など)に影響する
⑧非認知能力は親のしつけ(うそをついてはいけない、他人に親切にする、ルールを守る、勉強をする)や勉強以外の社会活動が重要であると言われている。
また、一方で教育施策として効果があるものは以下になります。
①行き過ぎた平等主義は思いやりの欠ける大人になる可能性がある。
②少人数制学級は貧困世帯の子どもには効果がとくに大きかった
③能力の高い教員の育成
特に③は興味深かったですね。
教員の「量」よりも「質」をあげることが国の教育政策をする上で、一番良い手法(費用対効果が高い政策)だということです。
「先生の質は大切だろう」という、なんとなく皆が思っていることですが、これがデータで明らかになるところが面白いです。
それでは、教育の「質」をあげるためにはどのようにしたらよいのか?
これについての本書の案は「免許制度を変更し、能力の高い人が教員になることの参集障壁を低くする」ということでした。
これについては、なかなか難しいところもあるかもしれませんが、自分の意見としては概ね同意です(概ねです)。
よくある意見だと思いますが、公の組織は効率が悪い、費用対効果が悪いといった意見があると思います。
これについては、法律や条例の縛りや他の影響など個々に色々な事情があって起こるのでしょうし、当事者にならなければわからない事態があると思います(これは公民限らず組織であればどこもそうでしょう)。
なので、もっと色々なバックグラウンドを持った人が色々な組織を往来できるようにすれば解決されるのではないかというのが自分の基本的なスタンスです。
色々なバックグラウンドの人が組織を往来すれば、新しい知識やスキルでその問題を解決できるかもしれないですし、組織を出た人が新しい知識やスキルで解決できるかもしれないからです。
もちろん、教育が及び影響力は計り知れないので、それこそ優秀な人に担って欲しいと思います。
ちなみに、もちろん決して今の教員の方々への批判的な意見は全く持っていません。
というかむしろ自分の知り合いの先生を知る限り、優秀で熱意のある方ばかりです(教員の卵の子達もみんな熱意があっていいですよね)。
ただ、昨今で教員になりたい人が少ないという新聞の記事なんかをみると何かしらの抜本的な改革が必要なのではと思ってしまいます。
また、一方で教員免許制度をとってまで教師になる方は熱意がある人なのに、本書で言う、付加価値の低い先生になぜなってしまうのか。このことを探ることも同時に必要だと思います。
あとは、先生を「教育」だけに専念させてあげることですね。学校運営や、その他色々なことの時間を先生以外の人が担うようになるといいのかなと。
4.まとめ
とまあ、冒頭の通り「教育」について素人考えを語ってしまいましたがw
ただ、個々の生徒に対する教育効果もちろんですが、本書の良い点は教育行政についてまで言及している点ですね。
本書の主張の通り、日本の教育行政も研究とタッグを組んでもっともっと効果的なものにしてほしいと思います。
というわけで、お子さんがいる方ももちろんのこと、何かしら「教育」について興味や関わりがある人におススメです。