緊急事態宣言下ということと、感染者数が爆発的に増えてきていることもあり、家ご飯が続いています。
まあ、家ご飯が好きなのでそれはそれでいいのですが、全然小洒落ていない街の中華料理屋さんで飲む瓶ビールが恋しいです。
さて、今回読んだ本はこちら。
いやー、勉強になりました。
しっかりと中国史を最初から読んだことがなかったので歴史の繋がりがよく分かりました。
それと同時にお隣の大国である中国という国を全然知らなかったな…と。
ちなみに何故この本を読もうと思ったのかというと…友人が年末年始に「キングダム」を貸してくれて一気読みしたからですw
やっぱり売れている漫画は面白いですね。
ちなみにキングダムが楽しかったのでもう少し中国史を知りたいなということで続いてネットでオススメされていた「達人伝」もすぐに購入。
これも負けず劣らず面白い。
この著者の三国志を題材にした「蒼天航路」は好きだったのですが、「達人伝」も負けず劣らず素晴らしいです。
キングダムが秦の始皇帝側を描いている一方で、達人伝はその少し前からの秦以外の国側の視点(秦は敵)から描かれているんです。
これが実に面白くて…。
ただ、もう少し歴史背景も理解しておきたいなということで、読み始めたのがこの「教養としての中国史」でした(前置きが長くてすみませんw)
1.中国における儒教
中国において儒教は深く根付いており、そのことこそが中国を理解する上で重要なことの一つであると本書では述べられています。
儒教について自分が知っているものと言えば、親孝行しろとか年長者を敬えといった割と今にも通じるモラル的なことが書かれているものという認識でしたが、実はもっと深いものでした。
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現実の世界から誕生した自己中心思想(衣食足りて礼節を知る)
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儒教の理想社会は昔にある(改革は悪)
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スペシャリストは評価されない
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儒教の射程は個人止まり
これらはあくまでエリートの人達だけに対して当てはまる部分もあります。
「士と庶」として、中国では明確にエリート層と庶民がわけられており、士については日本の武士とは違い、あくまで儒教に詳しい人なんですよね(科挙制度なんかもまさにこれですね)。
このあたりは、日本と少し違くて日本は割と文武両道が求められますよね。
また、西洋よりもはるかに進んでいた技術を持ちながら、社会経済の発展に結びつかなかったのかは儒教が大きく影響しています(ニーダム・パラドックス)。
はっきり言えば、エリート層はひたすら儒教を学ぶのみで、技術開発は下々がやるべきものだという認識だったからです。
自分は先程書いた漫画からの知識しかないですが、こうしてみると「蒼天航路」で曹操が儒家を政治から一掃したがっていた理由がよく分かります(才能だけで推挙してましたもんね)。
本書の指摘としてとても面白いのが、中国共産党になって中国が今のような国になったわけではなく、元々こういう倫理の国であったということです。
このあたりは外圧などの影響を受ける中で変わっていった日本とは大きく異なる点でしょう。
2.中華と外夷
中国の倫理では、世界は中華と外夷の2つに大別されます。
日本が過去に行っていた朝貢とは、中華の政治体型には属さないが、中華に対して「礼」を尽くしている国となります。
それ以外の国は、礼を失った「外夷=野蛮人」ということです。
このような儒教にもとづく「皇帝を中心とした世界秩序の構築」が体系として定着したことが現在の中国自体も形作っています。
中国の人が「国民国家」や「国際関係」といった観念をしったのは、つい最近、19世紀の後半になってからのことだからです。かれらはそれまで何千年間も「中国の論理」の中で生きてきたのです。
つまり、何千年間もそのような中で生きてきたわけで、それが染みついてしまっている。
だからこそ、中国は大国であろうとするし、国際関係がうまくいかない。
ただ、大切な点はその国、その国の理由があるということ。
国はそれぞれ成り立ちからすべて異なります。
あくまで、西洋的な視点だけで判断しないということ。ですね。
それにしても、バイデン政権になったので米中関係が今後どうなっていくのか気になりますね。
3.中国と法律
中国も現在は一応表向きは「法治国家」ということになっていますが中国の場合は他の法治国家と法律の位置付けが違うのです。
日本もそうですが法治国家の基本は「RULE of Law」つまり法が納めるのですが中国の場合は「 Rule by Law 」つまり法で納めるのです。
これについては結構腑に落ちました。
法律は民意ではなく、昔で有れば天子であり、現代は中国共産党が決めるものなのです。
なので、香港での強行とも思える行為が行われるわけなのです。
また、中国で賄賂が横行している話はよく聞きますが(そういえば、先日どこかの国でも農水関係の方が賄賂をもらっていましたがw)、これにも儒教が関係してきます。
それは財政をできるだけ小規模に抑えなるべく税金を取り立てないことこそが善政とする儒教に基づく理念があったからです。
平たく言ってしまえば、税金をあげて官僚の給料をあげるよりも、賄賂のほうが儒教的にはマシということでしょう。
まあ、どこかの政治家は税金もあげるし、献金ももらっているような…w
4.まとめ
中国という国は一つの国を標榜しながらも、一度もまとまったことはありません。
また、「官民乖離」に「コミュニティへの強い帰属意識」といった日本の感覚からするととても「奇妙な」国だと改めて感じました。
ただ、著者が強く言うように儒教を背景にした国であり、日本とは異なる国だということを理解すること、西洋的な考え方が必ずしも正しい(その国に合う)わけではないこと。
この考え方はとても大切だと思いました。
使う文字や見た目や文化など似ている部分が多いからこそ、「理解している」という思い込みに陥りやすいなとも感じました。
また、中国の人たちは政府を信用しておらず、信用しているのはコミュニティのみ。つまりはバラバラ。
だけど、「一つの中国」を目指そうとする。
それはあれだけの広大な領土の中で「一つの中国」を目指さないとバラバラになってしまうのでしょう。
だからといって、中国が行っていると言われている非人道的行為は許されるものではありませんが。
興味本位で読んだ本でしたが、思ってよりも分かりやすく、キングダムや達人伝の漫画に出てくる内容が一歩踏み込んで理解できるようになった気がします。
キングダムや達人伝が好きな方はもちろんのこと、中国史に興味がある方は入門としてとてもオススメです。