「組織をどう変えていくか」という課題を抱えている中で、何かヒントににならないかと思い、読んだ本。
大学時代に経営学の授業も受けていたんですけどねぇ…
もっと勉強しておけばよかったと思うほど、ためになりました。
自分の業界や、自分の会社がどれにあたって、実際にどのような経営戦略を持っている(または持つべき)と思いながら読むととても興味深いですよ。
1.経営戦略とは
経営戦略…それはよく聞くけど具体的に何って言われるとなかなか答えにくい内容。
本書では、企業の戦略を以下の2つに大別しています。
- 競争戦略(事業戦略)…
「特定の業界・市場で企業がどのような戦いをしていくか」を考えるもの - 企業戦略…
「複数の業界にまたがってビジネスをする企業が、全体としてどのように戦略を進めるか」(広義の多角化戦略)を考えるもの
競争戦略はどちらかというと広い意味でのマーケティングに近いイメージですかね。
企業戦略であれば、代表例だと富士フィルムの化粧品業界参入ですかね。
自分としても「競争戦略」がやはり学びたいところ。
ちなみに競争戦略で代表的なものとして「ポーターの競争戦略」や「リソース・ベースト・ビュー」があげられています。
ちなみにビジネスモデルと競争戦略についても言及されています。
- ビジネスモデルは…
「社内外のビジネス取引全体のデザイン」(完全な定義なし) - 競争戦略…
「業界内で企業がどのようなポジショニングを取るかなどの行動パターン」
つまりは、「企業が何かの戦略をとっても、それがビジネスモデルとフィットしていなければうまくいかない」ということです。
まあ、当然闇雲に競争戦略を持ってきても、そのビジネスモデルに合うか合わないかもあわせて判断しないといけないということでしょう。
2.新規事業について
新規事業を生み出す際には「両利きの経営」が重要になってきますが(本書でも両利きの経営に言及されています)、そのあたりの理論も多く記載されています。
新規事業を担当することが多いため(今回の組織論を調べ始めたのも発端はここ)、このあたりを覚書のために抜粋いたします。
①リアルオプション理論
リアルオプション理論とは、不確実性が高い事業環境下では、何らかの手段で投資の「柔軟性」を高めれば、事業環境の下ぶれリスクを抑えつつ、上振れのチャンスを逃さない。少額の投資をはじめ、不確実性が下がったときに限り追加で残りを投資する。
このあたりは、アジャイル開発などと似た考えですかね。
結構自分は、この理論のように”試行的に実施する”や”スモールスタート”が好きなんですよ。
実際には、結果として試行期間が終わってもがっつりやっていくことを見越しているのですが、”試行的”という言葉をつけると新規事業に反対している人でも割と渋々承諾してくれるケースが多く。
もちろん、失敗となったとしてもダメージが少ない(ほぼない)ような内容であることが重要ではありますが・・・。
②デザイン思考
”「アーキテクチュアルな知」を高めるためには、「最適な、『組み合わせ』を見出し、まとめあげる力」である、「デザイン力」が重要となる”と本書では述べられています。
なお、ここでいうデザイン力は、より広義の「組織のデザイン」までを意味しています。(ちなみにデザインに優れた組織に関する研究はまだ十分ではない)
デザイン力、デザイン思考は様々なところで取り上げらていますよね。
自分もデザイン力、デザイン思考たるものが何かと言われるとちょっと明確な答えが出せないですが(ユーザー視点、コミュニケーションの重視、プロトタイプ試行的なことですかね??)…。
③創造性とイノベーション
新規事業と言えば、アイデア!といったイメージがありますが、本書では「創造性」と「イノベーション」の違いが明確に述べられています。
- 創造性…
新しいアイデアを生み出す力。「既存の知」と「別の既存の知」の新しい組み合わせ。
→「幅広い人々からの多様な情報が効率的に流れる」ネットワーク上にいる方が有利(弱いつながりの人脈を多く持つ方がクリエイティブになれる) - イノベーション…
いくら創造的で新しいアイデアを出しても、それは製品化など実用化されなければ、「イノベーティブ」とはいえない。
→アイデアを実現するには①発案者の実現へのモチベーション、②社内での”強い”人脈が必要となる。
なお、日本企業はどうしたらよいかも述べれています。
- 自社の問題が「創造性の欠如」なのか、「創造性→実現げの橋渡しの欠如」なのか
・創造性の欠如→弱いつながり必要
・実現への橋渡しの欠如→根回し上手な上司の存在
自分の組織で考えると、「実現への橋渡しの欠如」のほうが問題かなと考えています(どちらかと言えばですけどw)。
人がそれなりにいる分、アイデアと言うのは持っている人も多いですしね。
恐らく、アイデアの欠如に至るほど、アイデアを実現できていないということでもありますが。
この辺りは、自分でも反省ですね。
3.リーダシップ&アントレプレナーシップ
そろそろ、部下ができてもおかしくない年齢なので、この辺りは個人的興味津々です。
まあ、正式な役職ではないですが、それっぽい仕事はやっぱり来ちゃうってこともありますしね。
①リーダシップのタイプ
さて、リーダーシップは2種類あると本章では論じられています。
- トランザクティブ・リーダーシップ
・コンティンジェント・リワード型
・マネジメント・バイ・イクセプション(能動型)
・マネジメント・バイ・イクセプション(受動型) - トランスフォーメーショナル・リーダーシップ
ちなみに一見するとトランスフォーメーショナル・リーダーシップの方が良い気がしますがは、トランスフォーメーショナル・リーダーシップは「不確実性が高い事業環境」下にある企業はその業績を高めるが、安定している時は押し下げるそうです。
まあ、そのあたりはやはり適材適所なのでしょう。
ちなみに、菅総理は個人的にはトランザクティブ・リーダーシップなイメージですね。
平時の時は、素晴らしいリーダーだったかもしれませんが(携帯料金値下げや不妊治療の補助金、また自身の不正疑惑などは特になし)、現在のコロナ禍における「不確実性が高い事業環境」には合っていなかったかもしれませんね。
②リーダシップの話法
また、かなり興味深かったのが、リーダシップの話法について。
ちなみにリーダーと言えば、ビジョンが大切ですが、ビジョンの評価軸があるのは知っていましたか?
- ビジョン中身
- ビジョンの特性
優れたビジョンの6つの特性は…
①簡潔であること
②明快であること
③ある程度抽象的であること
④チャレンジングなこと
⑤未来志向であること
⑥ぶれないこと
このあたりは、言われてみるとその通りだなと思いますよね。
自分が共感できるビジョンかどうかの判断軸にですね。
さて、総裁選・衆議院選挙が予定されていますが、”優れたビジョン”を打ち出してくれている人、政党はいるのでしょうか…。
③アントレプレナーシップ
誰もが夢見るアントレプレナーシップ。
ちなみに生産性と最も相関関係が高いのはアントレプレナーシップだと、何かで見た記憶があります。
さて、イノベーティブ・アントレプレナーシップに共通する思考パターンですが以下の4つになります。
- クエスチョニング
現状に常に疑問を投げかける態度のこと
「もし私がこれをしたら、世の中はどうなるのか」を考え続ける - オブザービング
興味をもったことを徹底的にしつこく観察する思考パターン - エクスペリメンティング
それらの疑問・観察から「仮説を立てて実験する」思考パターン - アイデア・ネットワーキング
「他者の知恵」を活用する思考パターンです。重要な思考パターンは「自分がどう考えるか」ではなく、「まずこの問いを誰に話すべきか」だそうです。
んー、難しいw
この中で一番難しいのはやはりクエスチョニングですかね。
新規事業もそうですが、何かを実施する施策を考えるよりも、「何が課題なのか」を見つけることが、個人的には一番難しいなと感じています。
まあ、自分ができることは上記の内容を日々の生活で時々思い出しながら、行動していくことで、身につけていくことしかないですねw
4.まとめ
ここには覚書程度でしか記載していませんが、それ以外にもかなりためになる内容がたくさん記載されていました。
経営学でうたわれている全体像を網羅するにはもってこいの1冊かなと思います。
この本を読んでいて思ったこととしては、組織を変えるのは相当大変だということ。
そして、どこの組織も悩んでいて、それなりに研究がされていること。
つまり、組織を変えるのは大変だけど、答えのパターンはいくつかあって、その答えのパターンを知らないことも1つ問題だなと感じました(だからこそ、コンサルを入れたりするんだろうけど)。
あとは、これらを知ったうえで、どのように組み合わせていくか。
それには自身のリーダシップも磨いていかなければいけないし、「両利きの経営」的な考え方も行っていかなければいけない。
んー、組織のリーダーってすごい大変ですねw
当然、トップや管理職の人にはおススメですが、自分くらいの年代の人にも勉強になる1冊だと思いますよ。