昨年度読んだ本の中で一番良かった本。
読んだのはちょうど去年の緊急事態宣言下ですね。
前作の「イシューからはじめよ」は前の会社の上司に勧められて読んでいたけど、いまだに自分の仕事にかなり活きています(未読の方は是非)。
というわけで、今回も結構期待をして購入しました。
日本の現状を取り巻く状況とそれにともなう課題の整理、及びそれらに対しての解決策の提示を主にITと教育(人材育成)の観点から書かれています。
現在、教育関係の仕事に身を置いている自分には、とても示唆に富んだ内容で勉強になりました。
1.データ×AIがビジネスとマネジメントに与える影響
本書ではここについて、以下の7つをあげています。
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すべての産業がデータ×AI化する
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意思決定の質とスピードが上がる
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状況把握から打ち手まで一つのループになる
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集合的なAIを作れるかのゲームになる
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マッシュアップエコノミーの時代になる
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事業および収益構造が2重になる
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ヒューマンタッチがより重要になる
もちろん、自分に直接関わってくる部分と関わってこない部分はあります。
特に自分の働いている分野だとまだまだデータ×AI化は進んでおらず(というよりAI化なんて全然?)、これから取り組んでいかなければいけない点だなと思いました。
まあ、ある意味伸びしろがあるということでしょうw
ただ、昨今の様子を見ていると実は政治が最もこれらのことができていない分野な気もしてきます。
これは政治家にこれらの知見がないのか、官僚の問題なのか、大企業の問題なのか(基本的に政府が何かをやる時には政策過程からコンサルや大企業が入ることが多いと思われるので)、政治が産業ではないからなのか、ステークホルダーが多すぎるからなのか、利権があるからなのか…どれなのでしょうね。
なんとなーく、偉い人達の勉強不足なのではないのかとも思えますが。
2.今後の変化
本書では「国富を生む方程式の変容」として、以下のように変わったと述べています。
【oid game】
・市場でのプレゼンス・寡占
・既存の枠組みの中での規模と効率の追求
・既存のルールでのサバイバル
【new game】
・未来への期待感、寄与
・既存の枠組を超え、ICT、技術革新をテコに世の中をアップデート
・ジャングルを切り開きサバイバル
ここ数年でテスラの株価が急伸して、株価ではトヨタを抜いて世界一の自動車会社になったことがまさにこれをあらわしているでしょう(というか2015の時点でこれを書いているのが凄いですが)。
個人的な印象ではありますが、old gameの内容は日本が得意な分野であり、new gameの内容が昔から日本に求められてきているが苦手と言われている部分な気がします。
まあ、日本でいうとソニーやホンダの全盛期がnew game でしょうか。
こういった未来において、必要なものとして
未来は我々の課題意識、もしくは夢を何らかの技・技術で解き、それをデザインでパッケージングしたものと言える。つまり「未来=夢×技術×デザイン」だ。
必ずしも技術一辺倒だけでは未来を作れないということ。
これは重要ですよね。
課題を発見できる人=課題を解決できる人ではないのかなと。
どちらが凄いわけではなく、両方の資質が必要になってくると思います。
なぜそう思ったかというと最近上司に課題(この問題を解決したい)を与えられたのですが、よくそんな課題を組み立てられたなーと(というか自分の部署で対応しようと思ったなと)。
まあ、シンニホンに書かれているような大きな話ではないんですがw
3.日本の現状
デービッド・アトキンソン氏の著書にも詳しいですが、日本の現状は明るくないです。
日本自体のGDPは全然伸びておらず(失われた20年)、生産性はあがっていません。
本書で詳しく分析されていますが、分野によってはG7と大幅に差がついています。
これは、ものすごい技術革新を行って一位になるという話ではなく、
日本の大半の産業はやるべきことをやっていない
ということです。
自分の組織で振り返っても未だにマンパワーでどうにかしようという傾向にあり、生産性とは程遠いです。
それこそ、Ai-ready化されていない組織です。
Ai-ready化とは
本書ではまずはAi-ready化を目指すべきだと書かれています。
Ai-ready化とは以下のように書かれています。
Ai戦略を語る以前の課題が極めて深刻あり、そここそがボトルネックになっているということ
そして、Ai-readyな状況にするためのポイントが10個述べられています。
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目的・目指す姿
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扱える人材
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対象となる分野、領域
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作り込みのあり方
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データの利活用状況
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市民/利害関係者のリテラシー
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データ処理力
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革新の主体と推進状況
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教育システム
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社会全体のリソースの低下
…自分の組織にあてはめるとどうでしょう…なかなか厳しいですねw
トップからの目的設定からして全く「う〜ん」って感じですね。
Ai-ready化された組織
また、Ai-ready化された組織についても5段階で述べられています。
レベル1(Ai-ready化以前)
製造、物流、販売など基本業務のためのシステム運用とデータマネジメントは行っているが、Sler頼みでAi×データを使った事業の運営、刷新、創造については着手していない
レベル2(先進的な旧来の大企業/初期のネット系スタートアップ)
外部の専門家の力を借りてAi×データの利活用に着手しているが、取り組みは既存の人間の仕事(業務)をキカイに置き換えることが大半
レベル3(中〜大規模なインターネット企業の多く)
既存の業務の機械化にはめどが付き、今後の成長と事業刷新のための重要なレバーとしてAI×データの利活用を開始。これに向け、まとまったリソースの再配分が行われている。
レベル4 (Spotify,Toutiao他先端利活用企業)
Ai×データの力を解き放つことで、コア事業においてこれまて不可能だった夢や課題解決を実現している。未来を信じ、Ai-readyになるまでリソースを一過性でなく投下し続けている。
レベル5 (Alibaba,Alphabet,Amazonなど)
すべての事業、機能がデータ×AI化し、業界そのものの本質的な刷新を常時仕掛け、変容を引き起こしている。国内外の競合に対抗し得るレベルでAi-ready化に向けてリソースを投下できている。新しい試みがあらゆるところから雨後の筍のように日々生まれて、常に世界の最先端をリードし注目されている。
さて、自分が所属している組織がどの段階にいるかというと…
レベル5、レベル4は当然のことレベル3も達成していないでしょう。
じゃあ、レベル2はというと外部の専門家の力を借りるどころかAi×データ化の活用にほとんど着手できていない。
先程も書いたけど、マンパワーでどうにかしようという風潮がある(そこには人件費が高くないことと、雇用することの義務があるのかもしれませんが)。
というわけで、当然のごとくレベル1だなとw
じゃあ、自分の組織をどのように変えていくのかというと…
①トップダウン
ここは目的、目指す姿にもかかわってきますが、どのような組織していくかという話になるとやはりトップダウンは必要になってきます(というかトップの仕事でしょう)。
これはリソースの投下にも関わってきますしね。
これを課題と捉えられるトップであって欲しいですね。
②関係者
自分の周りのベンダーや組織外の関係者がどのような提案をしてくれるか。
もちろん、ベンダー頼みになってはいけないですが、ベンダーの能力・提案力でも十分に自分の組織は変わることができると思います。
③自分のできること
これについては学ぶしかないかなと。
学んだ上で、どう変えていくか提案すること。
まあ、仕事なんて端的に言えばそれの繰り返しだと思っていますがw
あとは、どこまで刺さる提案をできるか…ですかね。
4.まとめ
日本の未来に対する一つの解であり、心構えが書かれた名著だなと思いました。
データも豊富でこの分量でこの値段はお得だなとも思ったりw
いずれにしても、自分も30代半ばです。
社会人の一人として、未来の子ども達に何を残せるか真剣に考えて、アクションを起こしていかないといけないと思いました(大きなことはできないですがw)。
Ai、組織、人材育成と色々なことが一冊で学べるので是非読むことをオススメする一冊です。