なすが食べられるようになりました。

30代共働き庶民のサラリーマンです。趣味(ファッション・読書・映画・旅行・アウトドアなど)と時々仕事についての覚え書き。

若い人にこそ読んでほしい。【読書感想】新・生産性立国論/デービッドアトキンソン

コロナの感染拡大がかなりなことになっていますね…。

病床がひっ迫している中で、成人式をはじめとした色々なイベントが中止になっています。

それに対して、菅政権の後手後手感がいなめません。

もちろん安倍政権の時と対応が何か変わっているとは思えないのですが、マスコミ対応と就任したタイミングの悪さといったところなのでしょうか。

また、安倍政権自体の「政治とカネ」の問題もかなり表立ってきていますし、なんだかなぁといったところです(自民党に代わる政権がないことが最も大きな問題の一つな気もしますが…)。

 

さて、そんな安倍政権に多大な影響を与えているだろうと思われるデービッドアトキンソン氏の「新・生産性立国論」を読みました。

 

 

 

 

いやー、勉強になりました。

目から鱗というか、政府が賃上げを行っている理由がよく分かりました。

それでは、以下感想です。

 

 

 

 

1.日本の直面している一番の問題は人口減少と少子高齢化

これはもうここ数年ずーっと言われてきていることですが、日本が直面している大問題はまさにこの2つ。

・人口減少

・少子高齢化

日本のほとんど問題がこの2つから派生しています。

これは国も各自治体も民間企業も全員がこれに対して頭を悩ませていることでしょう。

 

民間企業にとっては、人が減るってことはそれだけで消費者が減ってしまうし、ましてや少子高齢化で一番お金を稼いで使う人達が減ってしまう。

一方で、国や自治体は一番税金をおさめてくれる人達が減ってしまい、一番お金がかかる人達が増えてしまう(もちろん、お金がかかる人達はそれまで一番頑張って税金をおさめてくれていた世代です)。

 

ちなみに本書では、

GDPは絶対に維持しなければなりません。理由は2つあります。これから日本では人口が減りますが、高齢者の数はあまり減りません。高齢者自身が負担する医療費の水準が今と同じだとすると、数が減らないので、GDPが減れば、GDPに占める医療費の割合が高くなります。今後高齢者1人にかかる医療費はおそらくさらに増えるので、若い人の負担が一層重くなるのです。

2015年度の国民1人あたりの負担額は年間約93万円ですが、制度を変えずに人口が減っていくと、2060年度には約136万円まで増えます。

生産年齢人口で見ると、負担額は一層深刻です。生産年齢人口1人あたりの負担額は、同じ期間で約154万円から約268万円にまで急増します。就業率と収入を勘案すると、男性の負担はなんと約194万円から約338万円にまで、膨らむのです。

とあります。

 

いや、恐ろしいですね…2060年度というと自分は70代…少なくとも生産年齢からは外れていますが、自分の時代に今のような社会保障制度が維持されているとは甚だ想像しがたいですね…。

その上、その時の生産年齢の負担は今の1.5倍…もちろん単純計算ではいきませんが、手取りはいくらぐらいになるんでしょうかね。

 

かと言って、この社会保障制度が維持できなくなるということは、格差社会が拡大している中で、より弱者に対して厳しい国になっていくということです。

 

これはどうなんでしょう。

自分は日本以外の国に住んだことがないのでなんとも言えませんが、社会保障制度のレベルが下がると貧困のスパイラルが強くなり、治安の悪化に繋がる気がします。

 

 

2.解決策は「生産性の向上」

まずは「生産性」とは何かですが、生産性とは1人あたりのGDPを指します。

ちなみに購買力調整をした1人あたりのGDPが一般的な生産性の定義になります。

(恥ずかしいことに知りませんでした…)

 

また、一般的には生産性向上には以下のようなメリットがあります。

①労働者の生活水準の向上と、労働条件の向上

②年金基金と一般株主の配当利益の増加

③消費者が受け取る付加価値の向上

④環境への配慮の向上

⑤政府が格差社会緩和のために使う税収の増加

です(全然知りませんでした…w)。

 

そしてこれらの知識の上で、本書の主張のメインとなるのが「生産性の向上」です。

本書の主張をまとめると、

『社会保障制度を維持するためには今のGDPの水準を維持する必要があるが、GDPが人口×一人あたりの生産性で決まることから、人口減少の中でGDPを維持するには生産性をあげる必要がある。』

というところでしょう。

 

これはもっともですよね。

労働人口が少なくなる以上、生産性をあげて補っていく必要があります。

だからこそのAI等のICTの活用を国をあげて進めているのでしょう。

 

また、生産性を考える上で2つの混同しやすい言葉を説明しています。

 

1つ目が利益と生産性を混同しないこと。

生産性は収益性の指標ではありません。収益性だけを考えれば、人件費と設備投資を削れば、短期的には利益は増えます。しかし、そうするとその分だけ付加価値向上とイノベーションの機会が減るので、競争力と将来性が犠牲になり、いずれはその企業の業績に響いてきます。イノベーションによる収益性の向上と不健全なコスト削減は、まったく別物です。

 

2つ目が効率性と生産性を混同しないこと。

 生産性は、効率性より広い概念です。簡単に言えば、生産性は使える資源をすべて総合的に考えて、どれだけ新たな価値が生み出せているかを測るものです。 一方、効率性はあくまでもある作業を、労力や時間、そして資源の無駄なくこなすことです。1日中、労力・時間・資源を使って、不良品を無駄なくつくり続けることも、「効率がいい」と表現することはできますが、売上にならない以上は、生産性はゼロです。 生産性のないもののことを、無駄と呼ぶのです。

 

これにはなるほどなーと思わされました。

生産性と聞くと「効率性をあげて利益を高める」と言われがちだなと。

実際に最初の会社の時は残業を申請が出来ず(雰囲気的な問題もですし、実際にそんなお達しが出ていたような気がします。)、新人で仕事が遅いのはわかるけど、なんで働いている分の残業が申請できないのか疑問でした。

今はその辺りも改善されているようですが。

 

結局、企業という血の通わない組織になると人件費を削って利益を出すことを厭わない経営者が増えるということなのでしょう(もちろん、売上が低いときは仕方ないですが)。

 

結果として生産性をあげることで、付加価値を向上させるサービスや製品を作ることで、賃金をあげていき、GDPをあげ、社会保障を維持していくこと。

 

とてもシンプルな答えで王道な答えですよね。

 

 

3.日本はなぜ生産性が向上しないのか

ちなみに日本の生産性が向上しなかった理由を本書では、「経営者が無能だから」と言い切っています(経営者の人が読んだら怒るだろうなw)。

まあ、確かに日本人労働者の質は世界第4位である以上、その労働者を使って最大限効果的な経営が出来ていないのは経営者にあると言っても仕方がないでしょう。

 

本書でもあるように優秀な人材に、その人がやるべきではない、レベルの低い仕事をさせていることも一つの原因でしょう(レベルの高い仕事を用意できないことも含めて経営ができていないということでしょう)。

 

もちろん、本書では経営者が無能でいられる理由なんかも書いてあり、なるほどなというところも多かったのですが。

なぜ日本の経営者は無能なのでしょうか。

有能な人が経営者になっているはずなので、経営者としての才能がないのか、経営者になったとたんに無能になるのか、経営者の勉強をしていないからなのか…難しいですね。

 

もちろん、有能な経営者の方々も多いのでしょうけど、なんとなーく昨今の政府と業界のズブズブな関係をみていると、経営者よりもヨイショがうまい人がなってるだけなのではないかと勘繰っでしまいますよね…。

 

あとは大胆な制度の見直しができないというのもあるかもしれません。

本書に書いてあるとおり、配偶者控除なんていうのは悪く言えば、税金も払わず制度にタダ乗りしているだけですし、これについては女性の社会進出を押しているのに何故配偶者控除を維持しているかは個人的には本当に謎でした。

まあ、自民党の重鎮の方々は女性の社会進出よりも昭和の女性は家を守るもの的な価値観でいるということを最近ニュースでみて、納得しましたがw

 

 

4.まとめ

長々と書いてしまいましたが、非常に勉強になる一方で耳が痛ーい内容でした。

また当時に今から変えていかないと、日本の衰退を止めるのに手遅れになるという怖さにもかられました。

ただ、コロナ渦での政府の対応や最近の政治と金の癒着をみると本当に大丈夫かなと心配になります。

でも、まずは自分の仕事の生産性をあげていくことからはじめないといけないですね。

会社を経営したり組織をマネジメントする立場にある人はもちろん、若い人たちにも読んでほしいオススメの一冊でした。

 

 

 

 

多様性が必要とされていく社会で、考えなければいけないこと。身につけなければいけないこと。【読書感想】僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー/ブレイディみかこ

なんとなーく気になっていた作品。

本屋にも結構置いてあったし、題名も割と独特だったけど、内容がよくわからなくて手にとっていなかったんですよね。

 

それでもやはり気になったので楽天のお買い物マラソンに合わせてポチッとすることに。

 

 

 

 

いやー、やっぱり世間で評価されている作品は読んでおくべきですねw

めちゃくちゃ面白くて一日で読破しちゃいました。

 

内容としてはハーフ(著者のブレイディみかこさんは日本人のイギリス在住で旦那さんはイギリス人)の息子さんが、由緒正しい学校から中学に上がるタイミングで、地元の(荒れ気味の)中学校に行くことで、起こる事件を通して、社会の問題を描いていく内容。

 

特に差別と多様性、イギリスの教育制度について凄く勉強になりました。

 

 

 

 

1.差別と多様性、そしてエンパシー

今年は特に人種差別について世界的に大きな話題になっていますよね。

「Black lives matter」日本語訳は(色々と議論があるみたいですが)、「黒人の命は大切だ」ということ。

 

個人的な感覚からすると黒人差別については、もう過去の話だよね~(特に日本では)と思っていました。

むしろ、ヒップホップ文化など黒人を「クール」として捉えているのが日本の若い世代の全体的な潮流じゃないかなとも思っていました。

 

と思っていたところ、日本での記述も…。

 

もちろん、黒人だけだはなく「人種差別」ということでは、日本でも人によっては未だに「人種差別」的な考え方を持っていたり、子どもにおいてはいじめがあるでしょう。

 

本書を読んで気づかせてくれるのは、米国では実際に多くの人種差別問題が起きているし(黒人だけでなく)、それは英国でも同様だということ。

 

そして、それは恐らく日本を含めた世界中でも当てはまるだろうということ。

 

まあ、隣国同士が仲が悪いことはよくあることですが(自分がバックパックでまわった経験から言うと大体隣国同士は戦争したりしてるので仲が悪いですw)、人種差別というのは自分達の世代で終わりにしたいですよね。

 

むしろ、日本はこれから移民を受け入れていく可能性がある上で、こうした人種差別がいいことを生み出すとは決して思えないですし。

 

多様化したレイシズムには様々なレイヤーが生まれていて、どんどん複雑になっていく。移民と言ってもいろんな人種がいるし、出身国も違う。移民の中にも人種差別的な言動を取る人はいるし、やられたらやり返す人もいる。その攻防戦を見ている英国人は英国人で、どちらかの肩を持って他方に差別的言動を取ったりする。

 

これは今後、日本も間違いなく直面することでしょう。

結局、少子高齢化の中で①AI等を活用した生産性の向上、②高齢者の労働力の活用、③女性の社会進出ということで、生産性を維持しようとしていますが、やはり労働力の確保という側面では移民を受け入れていく可能性も0ではないと思います。

また、レイシズムが多様化していくと、社会問題として認知されないレイシズムが起こりうる怖さがありますよね。

 

どれかを一つ選べとか、そのうちのどれかを名乗ったかでやたら揉めたりする世の中になってきたのは確かである。

分断とは、そのどれか一つを他者の身にまとわせ、自分のほうが上にいるのだと思えるアイデンティティを選んで身にまとうときに起こるものかもしれない、と思った。

 

このあたりは、第二次大戦中のナチスや日本を思い浮かべますよね。

政治がアイデンティティを操る怖さはここにあるんだろうなと思います。

社会から多様性が失われる怖さ、それが誰かの誘導であればよりよくない結末しか生まないですよね。

人間よほど「できた人」でない限りは 、優越感は心地の良いものですからね。

だからこそ、教育や学びが重要だなと改めて思います。

 

シンパシーのほうはかわいそうな立場の人や問題を抱えた人、自分と似たような意見を持っている人に対して人間が抱く感情のことだから、自分で努力をしなくとも自然に出てくる。

だが、エンパシーは違う。自分と違う理念や信念を持つ人や、別にかわいそうだとは思えない立場の人々が何を考えているのだろうと想像する力のことだ。

シンパシーは感情的状態、エンパシーは知的作業とも言えるかもしれない。

 

シンパシーという単語は知っていたけれど、エンパシーは初めて知りました。

大切な感覚だなと。

共感ではなく、想像すること。

同じようなバックグランドや自分の経験や考えが同じ人であれば、共感できるでしょう。

ただ、次のステップとして、自分と考え方や立場の違う人のことを想像すること。

ずっと前に読んだ本でちょっと記憶が定かではないけれど、森達也さんが著書で似たようなことを書いていた気がします。

 

個人的にはエンパシーを伸ばすには、やはり多くの本を読み、映画やカルチャーを知り、歴史や宗教などを学び、旅に出て経験するしかないのかなと思います。

まあ、この辺りは出口治明さんと同じ考えですかねw

 

 

2.経済格差、貧困問題

人種差別は違法だけど、貧乏な人や恵まれない人は差別しても合法なんて、おかしくないかな。そんなの、本当に正しいのかな?

 

人種差別は生まれ持ってのものだから、問題が顕在化しやすいですが、貧困への差別は問題をとらえることが難しいですよね。

貧困になるのは個人の努力不足やどこまで(どのように)解決すべきかが明確ではないからです。

ただ、貧困問題も個人の問題ではなく、社会の問題という側面もあるし、個人の資質だけというわけではないでしょう(これはお金持ちにも当てはまりますよね)。 

 

もう授業やクラブ活動のためだけに学校予算を使える時代じゃない。貧困地区にある学校は、子どもたちの生活というか基本的な衣食住から面倒を見なければいけない。

 

少なくとも、子ども達には経済格差に関わらず、生活と教育を提供してあげたいですよね。 

 

現実問題として政府があまりに小さくなると、「恵まれない人に同情するならあなたがお金を出しなさい。そうしないのなら見捨てて、そのことに対する罪悪感とともに生きていきなさい」みたいな、福祉までもが自己責任で各自それぞれやりなさいという状況になるのだ。

 

格差がますます大きくなる中で、日本でも同様の問題は起きてくると思います(実際には起きていると思っています)。

親かその子供のどちらかが、お金を持っていればなんとかなるでしょう。

実際には、経済的にいい時代を過ごし、年金を含めて経済的に豊かな支援を受けている親世代がお金を持っていて、子どもにお金を回しているという構図が多いと推測されます。

しかしながら、親がお金がない場合に、今後の日本経済が先細っていく中で、貧困問題が解決されていくとはなかなか想像しがたいとは思います。

この辺りは、マスコミや政治家が社会問題としてしっかりと捉え、金融政策頼みではなく、経済政策をしっかりと打ち出すともに、投票率の少ない世代へのケアを行ってほしいと思います。 

 

 

3.イギリスの学校政策について

英国では、公立でも保護者が子どもを通わせる小・中学校を選ぶことができる。定期監査報告書や全国一斉学力検査の結果、生徒ひとりあたりの予算など詳細な情報を公開されていることが義務付けられていて、それを基にして作成した学校ランキングが、大手メディアのサイトで公開されている。

これは、なかなか面白い取り組みだなと思いました。

実際に、私立を除いて小・中学校を選ぶという発想が日本にはないですしね。

まあ、もちろん学力だけではない評価軸を用意することが重要だと思いますが、日本もこういった学校改革を行ってほしいと思います(もちろん、教員の方々の負担にならないようにですがw)。

 

 

4.まとめ

いやー、やはりベストセラーには理由がありますねw

読まず嫌いは駄目だと改めて思わされる、素晴らしい本でした。

 

そして多様性について、コロナ禍である今だからこそ考えさせらることも多く、本当に勉強になりました。

 

自分たちが正しいと集団で思い込むと、人間はクレイジーになるからね。

 

コロナ禍の今こそ、この言葉は一人一人が思い出さないといけないですよね。

何事も「過ぎたるは及ばざるがごとし」だなと。

 

それにしても、いい本でした。

学校の読書感想文の指定本?になっているらしいのもうなづけます。

ただ、自分達の世代よりも若い世代の子達の方が、様々な問題について小さい頃からぶつかっていることを思うと、未来は明るいな~なんて思ったりします(自分も頑張らねばですがw)。

読まれていない人は是非読んでみてください。

おススメです。 

 

どう解決していくのがいいのか。【読書録】AI vs. 教科書が読めない子どもたち

ついに安倍首相も体調を崩されてしまったようですね。

安倍政権の政策には賛否はあれど、エビデンスに基づいて政策をたてていくというのが以前に比べてなされていたのではないかというのが個人的な評価ですかね(もちろん自分が政策について関心を持つようになったからそう感じるだけの可能性は大いにありますが)。

 

しかしながら、やはり政治家(与党)は癒着だらけだなというのを国民にイメージさせてしまったというのは大きなマイナスポイントだと思います。

せっかく昔に比べてクリーンな政治になってきたのかなと思っていたところですが、やっぱり実態は変わっていないのかと政治不信を招いたことのダメージは大きいなと。

このあたりは次期総裁がどのように対応していくのか見ものですね。

退任したから有耶無耶というふうにはしては欲しくないと思います。

(とちょっと前に下書きをしていたら菅さんに決まっていましたねw)

 

さて、前置きが長くなりましたが本題に。

最近、仕事の関係からか教育関係の本を意識的に読むようにしていまして、本日はその中の一冊。

 

 

 

 

たまたまキンドルで見つけたので、ポチッと。

 

題名にあるようなVSというよりも、対比に着目して描かれています。

 

 

 

1.現在のAIについて

割とちょくちょくAIについての本は読んではいたのですが、個人的にはAIを理解する上で一番分かりやすく説明がされていたように思います。

 

本書の著者は「東ロボくん」といって、東大を受かるAIを作ろうというプロジェクトの第一人者。(ちなみに東ロボくん自体は今のAIは東大に合格できる能力があるんだぞと誇示するためのもの(シンギュラリティ的なね)かと思ったのですが、そんなことはなくもっともな理由を目的にしています。)

 

それだけに実際のAIを作る苦労をもとに書かれています。

 

そんな著者が冒頭でAIはまだどこにも存在していないと言い切るところからはじまります。

 

ちょっと長いですが、引用させてもらうと…

 実は「AIはまだどこにも存在していない」ということです。AIはartificial intelligenceの略です。一般的な和訳は人工知能で、知能を持ったコンピューターという意味で使われています。 人工知能と言うからには、人間の一般的な知能とまったく同じとまでは言わなくても、それと同等レベルの能力のある知能でなければなりません。基本的にコンピューターがしているのは計算です。もっと正直に言えば四則演算です。言い換えると、人工知能の目標とは、人間の知的活動を四則演算で表現するか、表現できていると私たち人間が感じる程度に近づけることなのです。 人工知能の実現には2つの方法論があります。逆に言うと2つしか方法論はありません。一つは、まず人間の知能の原理を数学的に解明して、それを工学的に再現するという方法でしょう。もう一つは、人間の知能の原理はわからないけれど、あれこれ工学的に試したら、ある日、「おやっ! いつの間にか人工知能ができちゃった」という方法です。

 

まず、AIの基となるコンピューターができることは四則演算であること。

 

つまり、それ以上のことが今現在のコンピュータ=AIでは不可能だということです。

 

数学で表せないことはAIでも表すことができないということ。

だからこそ、数学者である著者がプロジェクトを行っているわけです。

 

じゃあ、コンピュータで表せる数学とは何か。

これが論理、確率、統計

 

つまり、それ以外のものはAIでは表せないということ。

いやー、分かりやすいですね。

 

なので、AIで統計や確率を用いてチェスなんかのトップになれたり、画像診断でガンを発見できたりすることはできるものの、「あなたが好き」と「カレーが好き」の意味の違いを理解させるということは相当難しいと言うことです。

 

自分は家でAmazon Echoを利用しているのですが、確かに答えられる問題と答えられない問題がはっきりしてるなーと。

ただ、たまにユーモア溢れる回答を返してくるのでAIって完成しつつある?と思うのも事実ですが、そのあたりは開発者のユーモアなのでしょうw

 

 

2.現在の子どもたちについて

ここまでであれば、AIに関する分かりやすい本といった位置づけなのですが、この子どもたちに関する考察。

これがこの本が売れた理由でしょう。

 

(AIに仕事が奪われたあとに) 「残る仕事」の共通点を探してみると、コミュニケーション能力や理解力を求められる仕事や、介護や畦の草抜きのような柔軟な判断力が求められる肉体労働が多そうです。AIでは肩代わりできなさそうな仕事なのですから当然ですが、それは第2章で見てきたAIに不得意な分野と合致します。つまり、高度な読解力と常識、加えて人間らしい柔軟な判断が要求される分野です。

 

本書で書かれている通り、よく新卒採用で言われるコミュニケーション能力や判断能力といった力が今後必要になってきます。

 

しかしながら、今の若い子達に圧倒的に読解力が足りていない。

本書の題名通り、教科書の記述が正確に読み取れない子が増えているというのが本書の指摘となっています。

 

いやー、結構目からウロコでした。

書いてある文章が正確に読めないということ。

 

英語の和訳を間違える感覚で日本語が読めない感覚に近いのでしょうか。

 

今、2年目の男の子を教えてるのですが(1年目の際の教育係は自分ではないです)、書いてあることが理解出来ないことが非常に多いなと感じています。

マニュアルをみてもその通りに仕事が出来ない。

最初は知識不足や慣れかなとも思ったのですが、そーゆーわけでもなさそうで…なかなか苦労しているところでもあります。

 

実際にマニュアルを読めないところが問題なのか、理解するための知識が欠如しているのか、行動に移すことが問題なのか…どこが問題なのかで解決策(教育方法)も変わってきますからね。

自分の会社には教育のシステム化がなされていないと感じられることが多いので、このあたりは、本書を参考に試行錯誤していくしかないと考えています。

 

と、まあ偉そうなことを言っていますが、自分が若手のときはそんなもんだったなーとw

ダメな1年目だったので非常に良く怒られていましたw

というわけで、長い目で怒らず、焦らずじっくりと教えていきたいなと思っています。

 

さて、一般論に戻って。

問題はこの能力(記述を正確に読み取る)をどういうふうに「教育」や「学習」していくかということ。

 

これについては、後輩の教育と同じで、実際の学校や塾などの教育現場でも試行錯誤していくしかないのかなと思います。

その試行錯誤の結果が論文や書籍化としてある程度体系化されるでしょうし。

 

ただ、今回の本の中では相関関係がなかったと否定されていますが、やはり一番には本を読むことではないかなと思います。

それも精読ですかね(もちろん、相関関係を否定するわけではないですが、個人的には読書をせずには読解力が養われないのではと思っています。このあたりもう少し調査してみて欲しいですね)。

 

今の子達のまわりにはYouTubeやインスタがあるからこそ、余計に文字情報に弱いのかもしれません。

 

 

3.まとめ 

どちらかというとAIの部分に興味があって購入したのですが、むしろ今の子どもたちについての記述が勉強になりました。

今後、パソコンやスマホなしに仕事をするのが想像できないように、AIなしの仕事は考えられなくなるのでしょう。

ただ、その時に備えてAIに振り回されるのではなく「価値の判断」ができる人間でありたいなと思いました。

また同時に今の若い子達にもそう合ってほしいなと思います。

少なくとも教科書を読んで学べる子達が増えて欲しいなと。

本当に教育って大変だなぁ。

 

 

うまく仕事の説明できてますか?困っている新人〜若手のビジネスマンへ

早速ですが、仕事上でよく「何が言いたいのかわからない」、「言いたいことを整理してから来い」等など言われることはありませんか?

 

または、説明しようとすると頭が真っ白になりうまく説明することができない。

 

こんな経験はありませんか??

 

自分も社会人1年目の時に全く説明がうまくできなくて、毎日のように先輩につめられていました。

 


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というわけで、今回はそれを少しでも解決できればと思う話を。

まあ、あくまで30代のサラリーマンの一つの解決策だと思って読んでもらえればです。

 

 

 

 

1.きっかけ

自分の職場には今年2年目の男の子がいまして。

 

今年からその子(以下、はんぺら君と呼びます。※特にこの名前に意味はありませんw)と仕事上一緒にやることが多くなり、それに合わせて席替えということで隣に座るようになりました。

 

1年目の時は仕事上ではそこまで絡みはなかったので、あまり彼の仕事は把握していなかったのですが、チューターからよく怒られていたなぁと(個人的には「怒る」という行為は仕事においてパフォーマンスとして行う以外に意味のないものだと思っています。あ、「叱る」は別ですよ)。

 

はんぺら君自体は性格が良くて人に好かれるタイプ。

しかも、真面目に仕事に取り組んでいる感じ。

飲みにも一緒に行くけれど、飲み会でトークするには苦労してなさそうな感じ。

 

そんな、はんぺら君が最近元気(5月ぐらいのことです)がなくて、ちょっと心配になり声をかけてみると。

 

も:「何か元気ないじゃん。どーしたのー?もしや自粛疲れ!?」

は:「いや、そうじゃないんですけど。最近なんかダメなんですよ。仕事が全然できるようにならなくて…。」

(あ、何かいつも元気のある、むしろ元気が取り柄のはんぺら君が、テンションな低いなぁ)

 

も:「いやいや、全然そんことないよ~。1年目の最初から比べてめっちゃ成長してるよ!」

は:「いや、チューター先輩に比べて僕なんて…本当に全然仕事できなくて…」

(あ、これ何かやばい奴だ…。ちょっと悩みが深刻なパターンだ。)

 

も:「とりあえず、仕事がノらない時は帰るに限るから、明日できる仕事なら今日はもう帰ろう!」

は:「わかりました…」

 

ということで、はんぺら君と一緒に帰ることに。

帰り道、はんぺら君のほうから悩みを打ち明けてくれました。

 

その悩みこそ、「全然説明がうまく話せない」「話す途中で頭が真っ白になる」ということでした。


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2.自分の経験

自分も一年目の時は全然うまく説明できずに、毎日毎日チューターからつめられていました。

チューターというのが、運悪くいわゆる職場のエースで「デキる人」でかつパワハラスパルタな人だったので、本当に毎日会社に行くのが嫌でした(もちろん、説明能力がなかった自分も悪いのですがw)。

※ちなみに何故「運悪く」かと言いますと、仕事が「デキる人」と「教えるのがうまい人」というのは全く=ではないからです。これは今度機会があったら書こうと思います。

 

うまく説明しようとしても全く説明できず、色々と試行錯誤しても全然上達せず…ダメな社会人なんだと思い、会社に行くのが本当に嫌になっていきました。

 

そんなすごく悩んでいた時に、当時の課長から言われたのが、

「モンはロジカルシンキングが全くできていないから、それを学びなさい。ロジカルシンキングは才能では技術だから学べば身に着けられるから。」

 

これは目から鱗でした。

自分がうまく説明できないのは才能ではなく、技術が足りないのだと。

だったら、その技術を身に着ければいいだけじゃないかと。

 

そこから、色々な本を読み漁り、今ではすっかり普通にスラスラ(恐らく)説明できるようになりました(こうやって書くと簡単にできるようになったみたいですが、相当勉強したり試行錯誤はしました)。

 

 

3.うまく説明できない理由

うまく説明できない理由はいろいろ要素があって、代表的なところはこんなところだろうと自分は思っています。

 

①ロジカルシンキングが身についていない

②知識不足

③言語不足(社内言語、敬語に不慣れ)

④相手とのコミュニケーション親密度を測れていない

⑤慣れ

※あくまでモン調べです。

 

それでは、一つ一つ説明していきます。

 

①ロジカルシンキングが身についていない

ちなみにロジカルシンキングとは日本語では論理的思考のことです。

論理的思考とは何かというと、色々本によって説明はありますが、自分の考え方を整理して筋道たてて説明できる能力といったところでしょうか。

 

これについては、まずは「ロジカルシンキング」という知識を知ること。

そして身も蓋もないですが、「ロジカルシンキング」を身につけることが大切です。

 

そのために、自分として必読だと思っているのがこの2冊。

 

 

 

 

 

 

2冊とも買って読むことをおススメします。

また、図解などもあるので、キンドルなどではなく本で買うのがおススメです。

 

というかビジネス本はこれ2冊だけでいいんじゃないかと思うぐらい自分の社会人生活で役に立っています。

 

ちなみに結構分厚くて、読むのが大変です。

「1時間でわかるロジカルシンキング」みたいな本も出ていると思いますが、この2冊を読むことを本当に強くおススメします。

 

これを身につければこれから40年ぐらいビジネスでつかえます。

自分も読むのに苦労して、何度か読み直しましたが本当にこの本を読んでよかったと思っています。

 

②知識不足

うまく説明できない2つ目の理由として、自分の説明したいことに対する知識不足の問題があります。


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例えば、上司に「プロレスラーの武藤敬司の人形を作りたい」と説明しなければいけない時があったとしましょう。

その時にプロレスや武藤敬司について詳しくないと…うまく説明できないですよね?

説明の内容にシャイニングウィザードって言葉や闘魂三銃士って言葉が入っていたとして、その言葉自体の意味が分からないと納得した説明って難しいのではないでしょうか。

 

うまく説明できないのは自分がその内容を本当に理解していない知識不足の可能性があります。

これは、自社の商品、組織、業界など仕事をするうえで、すこしづつ覚えていきましょう。

 

③言語不足(社内言語、敬語に不慣れ)

自分もそうだったのですが、敬語の使い方がよくわからない。

すると敬語をしっかり話さなきゃということが気になって、本題がうまく話せない。

自分もよく苦しめられました…。 


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これについては、1年目の子達に必ず伝えているのが、

「敬語は外国語だと思って学習しろ」 

です。

 

敬語を日本語の延長だと思っているので、みんな元々勉強しなくても話せると思い込んでしまうのです。

でも、話せないから悩んでしまう。

 

これの解決策は簡単で、外国語のように一度参考書的な本を買って勉強すればいいんです。

これも、一度身に着けたら一生使えるので早いうちに身に着けてしまうのがいいと思います。

 

④相手とのコミュニケーション親密度を測れていない

コミュニケーション親密度とは、相手の経験・知識等のバックグラウンドレベルが自分と親密であるかどうかです(前に読んだ本で別の言葉で言われていたのですが、失念してしまったのであくまで造語です)。

 

よく長年連れ添った夫婦がアレとかコレとかの指示語だけで、何が言いたいかわかるということがありますよね?

あれが、まさにそうで、長年連れ添った夫婦は経験や知識などを共有しているから説明しなくても相手の考えていることが想像できるということ。

 

これと同様に学生までは同じような経験・知識レベルの人たち会話することが多かったので、特にこれを意識することはなかったと思います。

しかしながら、社会人になると価値観も含めて様々な人と一緒に働くので、コミュニケーション親密度が全然違うことからうまく話せないということが起こります。

 

これについては、少なくとも相手の知識レベルを図りながら随時説明の細かさを変えていきましょう。

 

 

⑤慣れ

これは、もうそのまんまですw

①~④が例えできていたとしても、やはり実践あるのみ。

どんなにスイングがキレイでも、実際の打席に立たないとヒットは打てません。

説明するタイミングを好機ととらえて、頑張りましょう。

 

 

4.まとめ

うまく説明するために、色々と書いてみましたが悩んでいる方は是非やってみてください。

決して、才能がないとかではなく、あくまで後から身に着けられる技術の問題だと自分は思っています。

もちろん、身に着け方は人それぞれなので、これはあくまで一例と考えてもらって自分に合う方法を探してもらうのもいいと思います。

 

自分も新人のころ仕事ができなくて苦労したので、少しでも若手の子達の悩みを救えればなと今でも思いつつ続けていました。

はんぺら君の悩みに対してこれから答えていく中で、備忘録としてブログに書き残していこうと思います。

それと同時に少しでも若手の子達の悩みを救える一助になればいいなと思っています。

 

 

一眼レフカメラの機能使いこなしていますか?シンプルでとても分かりやすいのでオススメです。【読書感想】カメラはじめます!/こいしゆうか

自分でも多趣味だなーと自覚はあるのですが、長くやっているはずなのにイマイチ腕が上がってないんじゃないかなーという趣味の一つがカメラ。

最初は大学時代にキャノンのD40をバイト代を叩いて買ったことが始まりでした。

バックパックでかっこいい写真をとれたら嬉しいなという思いからだったのですが。

当時は適当にパシャパシャと。

その後、卒業旅行のボリビアでカメラを盗まれてしまい…。

 

それから何年かあとにソニーのミラーレス一眼を購入。

旅のお供になりました。

その後、単焦点レンズを購入してより楽しみが増えました。

 

ただ、構図の勉強はちょろちょろしてたけど、機能についてはからきし。

なんかどーしても頭に入らないんですよねw

 

と、そんなこんなで一念発起してもう少し趣味のレベルを高めようと。

 

購入したのがこちら。

 

 

いやー、わかりやすかったです。

漫画形式で文字が大きいのでキンドルのスマホでも読みやすくていいですね。

 

基本的にはAvモードにして以下の3つの使い方が大切。

  1. 絞り
  2. 明るさ
  3. ホワイトバランス

 

シンプルで分かりやすいですよね。

 

さらに、この本の分かりやすいところはこれを使うとどういった写真がとれるかがわかりやすく解説されているところ。

 

自分ももちろん機能は知っていたのですが、「どういう使い方」をすれば「どういった写真」になるかというのが分からなかったのですが、この本でスッキリしました。

 

よくあるカメラの本だと詳しく書かれすぎていて読んでるうちに飽きてしまう…ということが多かったのですが、この本の良いところは本の情報量が少ないところ。

つまり、情報の取捨選択ができているなと。

 

その結果、頭に入ってきやすいことと自分でも使いこなせそうな気になるというところがいいところですねw

 

また、逆光の使い方や構図についても解説があり、勉強になりました。

 

もちろん、インスタ映えする食べ物の撮り方なんかも掲載されています。

 

初心者の人はもちろん、一眼レフカメラ(ミラーレスも含めて)を購入したけれど、もう一歩進んで使いたいという人にオススメです。

 

いやはや、これを機にインスタ(あげるほう)でもやろうかな〜。

親、先生、行政職員だけでなく、教育に携わる人、悩んでいる人にオススメです。【読書録】「学力の経済学」/中室牧子

ちょっと仕事柄、教育関係の知識を得たいと思い題名とプライムの対象だったので、読んでみた本。

自分の見えていないものに気づかせてくれる、思った以上に名著でした。

 

「学力」の経済学

「学力」の経済学

  • 作者:中室牧子
  • 発売日: 2015/06/17
  • メディア: Kindle版
 

 

以下、感想などをつらつらと。

 

 

1.教育とは

教育に関しての本って多いですよね。

それについて、面白いことが書いてありました。

 

「不思議なもので、教育という分野に関しては、まったくといっていいほどの素人でも自分の意見を述べたがるという現象がしばしばおこる」と『統計学が最強の学問である』と著者の西内氏が述べている

 

まさにその通りですよねw

なぜなら、みんな「教育」を体験しているから、専門的に学んでなくても語れてしまう。

これが、例えば「カバディ」だったり、「会計」だったりすると、やっていない人は語れないですもんね。

しかも、影響を与える変数が多いことと、人によって個人差が如実に出るといった理由から、これが正解という要素がないことも難しいですよね。

「子育てに成功したお母さんの話聞きたい」という欲求自体に問題がある和ではありません。しかし、どこの誰かが子育てに成功したからといって、同じことをしたら自分の子供同じように成功するという保証は、どこにもありません。

本書にある通り、こういった事態がおこることが興味深いところです。

このあたりが、親や先生方が「教育」について悩む一因でしょう。

 

さて、そもそも「教育」とはというところですが、教育基本法によれば以下の3つに大別されます。

  • 学校教育
  • 家庭教育
  • 社会教育

文字通り、学校教育は学校での教育、家庭教育は家での教育、社会教育は「それ以外」のものになります。

 

本書では、主に「学校教育」や「家庭教育」について述べられています。

 

 

2.人生の4大出費とは?

ちょっと話はそれるのですが、最初の会社が金融系だったこともあり、金融関係のことは勉強してきました(嫌々ながらw)。

その時に、学んだことで今でも納得感があることがいくつかあるのですが、そのひとつがこれ。

 

『人生の4大出費とは?』

 

知っている人は知っていると思うのですが、『人生の4大出費』とは以下の4つです。

  • 保険
  • 教育

 

特に、今回の「教育」は最も費用対効果が高いと言われています。

それなのに「教育」を受けたことはあるけれど、効果的な「教育」について学んだことはないですよね。

というか、書いていて思ったのですが、4大出費のものすべてにおいて、自分から学ばないと学ぶ機会はない。

これはなかなか面白いですよねw

 

 

3.教育を経済学の視点からアプローチする

さて、大分横道にそれましたが…

これが、本書の主題ではあります。

どこかの誰かの成功体験や主観に基づく逸話などではなく、科学的に根拠に基づく教育を。

 

それは具体的にどういったことかというと、

  • 決して目に見えないものを数字でし示すこと
  • 原因と結果、因果関係(相関関係だけでなく)を明らかにする

です。

 

このあたりは、自分が小学校や中学校の時は、確かに余り語られてこなかった気がします(語られてきたのかもしれないけれど、小さかったから知らないだけかもしれないけどw)。

 

ちなみに本書で語られている、教育において、経済学的に効果があるものは以下のこと(自分のメモとしてなのでざっくり抜粋してます)。

①「目の前のにんじん作戦」は効果的

②インプットに「ご褒美」を与えるべき

③むやみやたらに子どもほめると、実力の伴わないナルシストを育てることになりかねない

④子供の能力でなく、努力を誉める

⑤テレビやゲームの時間をやめさせても学習時間はほとんど増えず、勉強をみている、または勉強する時間を決めて守らせているのが効果が高い

⑥反社会的な行為については友人からの影響を受けやすい

⑦もっとも収益率が高いのは、就学前教育(幼児教育)であり、認知能力ではなく、非認知能力(生きる力、自制心・やりぬく力など)に影響する

⑧非認知能力は親のしつけ(うそをついてはいけない、他人に親切にする、ルールを守る、勉強をする)や勉強以外の社会活動が重要であると言われている。

 

また、一方で教育施策として効果があるものは以下になります。

①行き過ぎた平等主義は思いやりの欠ける大人になる可能性がある。

②少人数制学級は貧困世帯の子どもには効果がとくに大きかった

③能力の高い教員の育成

 

特に③は興味深かったですね。

教員の「量」よりも「質」をあげることが国の教育政策をする上で、一番良い手法(費用対効果が高い政策)だということです。

「先生の質は大切だろう」という、なんとなく皆が思っていることですが、これがデータで明らかになるところが面白いです。

 

それでは、教育の「質」をあげるためにはどのようにしたらよいのか?

 

これについての本書の案は「免許制度を変更し、能力の高い人が教員になることの参集障壁を低くする」ということでした。

 

これについては、なかなか難しいところもあるかもしれませんが、自分の意見としては概ね同意です(概ねです)。

よくある意見だと思いますが、公の組織は効率が悪い、費用対効果が悪いといった意見があると思います。

これについては、法律や条例の縛りや他の影響など個々に色々な事情があって起こるのでしょうし、当事者にならなければわからない事態があると思います(これは公民限らず組織であればどこもそうでしょう)。

 

なので、もっと色々なバックグラウンドを持った人が色々な組織を往来できるようにすれば解決されるのではないかというのが自分の基本的なスタンスです。

色々なバックグラウンドの人が組織を往来すれば、新しい知識やスキルでその問題を解決できるかもしれないですし、組織を出た人が新しい知識やスキルで解決できるかもしれないからです。

 

もちろん、教育が及び影響力は計り知れないので、それこそ優秀な人に担って欲しいと思います。

ちなみに、もちろん決して今の教員の方々への批判的な意見は全く持っていません。

というかむしろ自分の知り合いの先生を知る限り、優秀で熱意のある方ばかりです(教員の卵の子達もみんな熱意があっていいですよね)。

ただ、昨今で教員になりたい人が少ないという新聞の記事なんかをみると何かしらの抜本的な改革が必要なのではと思ってしまいます。

 

また、一方で教員免許制度をとってまで教師になる方は熱意がある人なのに、本書で言う、付加価値の低い先生になぜなってしまうのか。このことを探ることも同時に必要だと思います。

 

あとは、先生を「教育」だけに専念させてあげることですね。学校運営や、その他色々なことの時間を先生以外の人が担うようになるといいのかなと。

 

 

4.まとめ

とまあ、冒頭の通り「教育」について素人考えを語ってしまいましたがw

ただ、個々の生徒に対する教育効果もちろんですが、本書の良い点は教育行政についてまで言及している点ですね。

本書の主張の通り、日本の教育行政も研究とタッグを組んでもっともっと効果的なものにしてほしいと思います。

というわけで、お子さんがいる方ももちろんのこと、何かしら「教育」について興味や関わりがある人におススメです。

 

マーケットは今後どうなっていくのか【読書感想】マーケットでまちを変える/鈴木美央

自宅で読書週間ということで、買って積読本になっていた本をさっそく読み漁っていますw

今回はこちら。

 

マーケットでまちを変える: 人が集まる公共空間のつくり方

マーケットでまちを変える: 人が集まる公共空間のつくり方

  • 作者:鈴木 美央
  • 発売日: 2018/06/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

マーケットという人によってはピンと来ないかもしれませんが、マルシェや市といった屋外で人が集まって商売する場所のことです。

 

一応、本書では以下の条件を満たすものをマーケットとしています。

①屋外空間で売買が行われていること。

②入場に制限がないこと

③仮説であること

④伝統的な祭り・フリーマーケットを除く

 

自分は結構マーケットが好きで、海外でも必ず行くようにしています。

好きなんですよね、あの活気と言い、掘り出し物?が見つかりそうな雰囲気などが。

実際にマーケット運営にも少し携わったことがあるので、復習的な意味でも楽しく読めました。

 

 

1.日本でマーケットが増えている理由

マーケットは必ずしもおしゃれである必要はない。マーケットというとヨーロッパの洗練されたマーケットをイメージしがちだが、マーケットは世界中にあり、生活に必然性から生まれた場であることが多い。

そうなんですよね、本書でも述べられているように、マーケットは必ずしも海外から入ってきたものではなくて「市」そのものでもあります。

お洒落なマーケットもあれば、そうでないものがあってもいいと思います。

それぞれの個性があることが大切だと。

 

また、本書では現代版マーケットが増えている理由として三つの理由をあげています。

①社会のニーズへの回答

②政府の助成事業の後押し

③公共空間の活用への関心の高まり 

 です。

 

①社会ニーズへの回答

これは、地域コミュニティの衰退への対応です。

実際に国の施策として各省庁が出しているプランの中で、ほとんどが地域コミュニティの活性化があげられます。

これは各々の省庁でそれぞれ理由はあると思いますが、単純に言えば、人は助け合った方が効果的であるからですね。

当たり前にあった地域コミュニティによって支えられていたものが、当たり前じゃなくなったことで様々な問題が噴出している…。

一度なくなってしまったコミュニティをもう一度紡ぎ出すのはなかなか難しいですが、それでもやはり少しでいいので一人一人が意識してやっていく必要があるかなとは思います。

 

②政府の助成事業の後押し

これは上記の流れに伴う国及び自治体の助成制度ですね。

 

③公共空間の活用への関心の高まり

これも行政の政策として、バブル時代のハードの政策からソフトの政策への転換があげられると思います。

新しくハード(建物など)を建設していくのではなく、既存のハードをどのように使用していくかを重視していくようになったということでしょう。

 

 

もちろん、マーケットによる効果が認識されてきたというのもあるでしょう。

個人的にはおしゃれなマーケットよりも仁義なき戦いなんかに出てくる市みたいなのがあっても面白いんじゃないかと思っていますがw

 

 

2.クリアしなくてはならない法規

マーケットに限らずイベントを開催するうえで、必ず確認する必要があるのが法規。

ここについてはどちらかと言えば備忘録的に。

 

開催場所について

①道路

・道路使用許可(管轄警察署長)

・道路占用許可(道路管理者、主に市町村)

②公園

・都市公園占用許可(公園管理者)

②公開空地

・占用許可(都道府県知事)

 

食品関係について

①食品営業許可(都道府県知事)

②臨時出店届(保健所)

 

とまあ、色々と実は面倒くさい。

特に道路なんてのは基本的にはほとんど許可が降りないケースも多々あります。

当然、道路は車が走ったりするところですからね。

このあたりは柔軟に行きたいところですが、これについてはイギリスのように警察の直轄を市長や県知事にしないと…ってとこですかね(それはそれで問題ありそうですが)。

まあ、国が大きく方向性を出していかなければ、自由度を持って行っていくのは難しいように思います。

 

 

3.マーケットが生み出す効果

本書ではマーケットが生み出す効果についても言及されています。

(1)生活の質の向上

①コミュニティの形成

②多様な人々に対応(老若男女、人種、文化的マイノリティの居場所)

③場所の魅力の向上(周辺の不動産価値を高める)

④教育や支援の場(参加の目的は商品売買だけではない)

⑤高品質な商品の供給

⑥食育への貢献

(2)多様な経済効果

⑦地域経済の活性化(周辺店舗の売上を上昇させる)

⑧雇用の促進

⑨観光客を呼び込む資源

⑩スタートアップの機会

⑪実店舗やウェブショップのプロモーション

⑫顧客ニーズを把握するマーケティング

⑬店舗間の交流(店同士が繋がりBtoBビジネスに発展)

(3)環境にやさしい商業形態

⑭CO2の排出削減(一般的な流通網に頼らない直接販売)

⑮ゴミの削減

このように本書に記載されているように様々な効果があげられます。

マーケットを実践するうえではこのような効果を踏まえながら、目的をしっかり決める必要があるでしょう。

 

なお、「目的(何のためにしたいのか)」と「コンセプト(何をしたいのか)」 の違いについては、本書では以下のように記載されている。

コンセプトは、他者と共有することが前提となる。マーケットが目指す方向性のことである。短いフレーズに置き換えることができると、マーケットのサブタイトルとして使うことができ、分かりやすい。

目的は、具体的に期待する効果である。ダイレクトにコンセプトと繋がっているものはもちろん、コンセプトに直接関係しない目的があっても良い。

目的とコンセプトの違いについては結構自分の中でモヤモヤしていたのですが、この本を読んですっきりしましたw

 

個人的にはマーケットの重要性としては①コミュニティの形成⑦地域経済の活性化が主目的になってくるのではないかと思います。

実際に大体のマーケットがそうであり、それにプラスして⑨観光客を呼び込む資源として活用しているところもあるのかなといった印象です。

 

 

4.これからのマーケットについて

これからのマーケット運営については、コロナなよって難しい局面にはなるのかなと思います。

本当は個人的に海外のマーケット(特にアジア)みたいに超巨大なものや、物凄くニッチなものに焦点をあてたマーケットが出てくることを期待しているのですが、コロナがある以上マーケット自体の実施がなかなか難しいかもしれませんね。

 

代わりにオンラインでのマーケットみたいなものが出てくると面白いかなと思っています。

楽天に近いものではありますが、オンラインに設けられた場に対して限定的に出店されるようなプラットフォームができると面白いですよね。

さらにそこでズームのようなものでお客さんと店員さんが繋がって商品説明なんかが受けられたりとか…(もう既に実現されてそうですがw)

 

 

5.まとめ 

コロナの今、マーケット自体は恐らく自粛しているところが多いかと思います。

ただ、マーケットのあの雰囲気はとても楽しくて素敵ですよね。

まあ、だからこそ昔から市として栄えてきて世界各国でながーく続いてきたんだと思いますが。

コロナが落ち着いたらまたマーケットに是非行きたいですね。

マーケット運営について興味がある方は一読をオススメします。

 

 

 

 

 

 

 

やっぱり天才プロレスラーでした。【読書感想】完本1976年のアントニオ猪木/柳澤健

プロレス大好きな自分としては、前々から読みたかったこの本。

作者の柳澤健さんの本は結構好きで、既に2冊読んでいますw

 

ぐいぐい引き込まれる。【読者感想】1985年のクラッシュギャルズ - なすが食べられるようになりました。

 

愛してまーす!【読書録】2011年の棚橋弘至と中邑真輔 - なすが食べられるようになりました。

 

この方の著書は分かりやすいのはもちろんのこと、その時の熱狂が伝わってくるんですよね。

そして、取材に裏付けされたその時代背景も含めてプロレスを解き明かしていく。

 

というわけで、今回読んだのはこちら。

完本 1976年のアントニオ猪木 (文春文庫)

完本 1976年のアントニオ猪木 (文春文庫)

  • 作者:柳澤 健
  • 発売日: 2017/02/03
  • メディア: Kindle版
 

 

相変わらず今回もめちゃくちゃ面白かったです。

 

今回の切り口は1976年に猪木が行った「異常」な試合の前後を通じて、アントニオ猪木、プロレス、総合格闘技を分析しています。

ちなみに「異常」な試合とは

  • ミュンヘン五輪柔道無差別および重量級の優勝者、ウィリエム・ルスカ戦
  • ボクシング世界ヘビー級チャンピオン、モハメッド・アリ戦
  • アメリカで活躍中の韓国人プロレスラー、パク・ソンナン戦
  • パキスタンで最も有名なプロレスラー、アクラム・ペールワン戦

です。

 

 

1.自分世代のアントニオ猪木

いずれも、まだ生まれてもいないため、自分世代で知っているのはモハメッド・アリ戦ぐらいでしょう。

それも、テレビや漫画などを通して知っている程度。

そういう意味ではこの本を読んで、アントニオ猪木という人物を自分は全然知らなかったなと改めて実感しました。

アントニオ猪木が現役でプロレスをやっている時期にぎりぎりテレビでプロレスを観れていたかなといったところ。

どちらかというと漫画で知っている内容が多いかもしれません。

 

自分より下の世代だと、総合格闘技のプロデューサーといったところでしょうか。

あとはお笑いやモノマネから知っているという程度かもしれません。

 

ただ、アントニオ猪木の知名度は漫画やテレビを通して絶大でした。

好きなプロレスラーには名前は入らないものの、レジェンドといったところでしょうか。

 

しかしながら、この本から感じられるアントニオ猪木はやはり天才プロレスラーだなと。

いずれの分野でも自分の分野を再定義しなおせることは開拓者としてとても大切なことでしょう。

それでいて、それを実現する能力があること。

 

アントニオ猪木で言えば、「プロレスの天才」でありながら、異種格闘技を行い、戦うだけの「強さ」を持っていたということでしょう。

 

 

2.時代とプロレス

プロレスは、ハッピーエンドを強く求めるエンターテイメントである。1950年代に力道山が作り上げたプロレスは、首都を焼け野原にされ、2発の原子爆弾が落とされ、無条件降伏を強いられたアメリカへの怨念をエネルギー源としていた。

基本的にはプロレスは、感情移入させて、その感情を消費するエンターテイメントだということ。

時代によって、感情は異なるけれども、海外でのプロレスが民族の感情を発散させることで成長していったというのが面白いなと。

実際に韓国などでは国策で行われていたということも他のスポーツとちょっと異なるところだと思います(スポーツではないけれど)。

 

自分がプロレスを見出した時には、「プロレスが最強の格闘技」で「誰がプロレスラーの中で一番強いか」みたいな話題はしょっちゅうありました。

 

これは、まさにアントニオ猪木が作り出した「プロレス」に自分がはまっていたということですがw

 

スポーツの目的は勝利である。スポーツマンは必ず勝利を目指す。だが、プロレスはスポーツではない。プロレスラーは勝利を目指さないからだ。よくプロレスは八百長などと言われるが、正確には違う。八百長試合ならばどんなスポーツにもある。普段は真剣勝負を闘い、時々負けてやるというのが八百長である。一方、プロレスのリングの上では真剣勝負は禁止されている。勝者と敗者を決めるというのが観客の欲望を代行するプロモーターであり、レスラーではないのだ。

これが、プロレスとスポーツの違いをまさに分かりやすく解説している文章だなと。 

ただ、時折、本気の勝負(異種格闘技戦)を入れて、これは本気の勝負なんじゃないかというのを巧みにプロモーションしたのがアントニオ猪木のプロレス。

 

ただ、アントニオ猪木が異種格闘技戦をやらなければならかった理由として、もう一人の天才ジャイアント馬場の存在があったのが面白ところ。

結果として、この2人の存在がプロレスを国民的なエンターテイメントとして持続させてきたのでしょう。

 

 

3.アントニオ猪木の功績

結果として、プロレスを持ち上げて、プロレスを潰しかけた天才プロレスラーではありますが、やはりその功績は大きかったなと。

もちろん、モハメド・アリをプロレスのリングに持ってきたことは凄いですが、

日本以外の国で、総合格闘家やキックボクサーが尊敬を集めることはまずない。ポルノ男優や女優と同じように、人のできないことをする異界の住人として恐れられ、遠ざけられるのが普通だ。だが日本では違う。群を抜く強さや、鍛え抜かれたたくましい肉体は憧れの対象だ。日本にやってきたファイターたちは、自分が尊敬の対象であることに一様に驚く。 

やはり、格闘技を根付かせたという点ではアントニオ猪木の功績は大きいなと。

アメリカでもロシアでもオランダでもブラジルでも、リアルファイトである総合格闘技と一種の演劇であるプロレスとの間には、しっかりとした境界線が引かれている。にもかかわらず、大多数の日本人にとってプロレスと総合格闘技の境界線の区別はないに等しい。 

ただ、一方でアントニオ猪木の作り出した「プロレス」によって 総合格闘技が入ってきたときにプロレスラーは苦労するのですが…。

このあたりは、「2011年の棚橋弘至と中邑真輔」を読んでもらうと分かりやすいと思います。

 

2011年の棚橋弘至と中邑真輔

2011年の棚橋弘至と中邑真輔

  • 作者:健, 柳澤
  • 発売日: 2017/11/16
  • メディア: 単行本
 

 

 

 

4.まとめ

でも、今思うとレスラーは別にアマレス出身の人たちがアマレスルールで本気の試合をしてお金をもらうわけではないのに、名前が「プロ」レスということでエンターテイメントと他のプロスポーツとの境界をあいまいにしているところが面白いですよね。

ただ、自分の成長とともにプロレスの見方が変わっていることは感慨深いことですし、だからプロレスが好きということもでもありますがw

アントニオ猪木を知りたい人も知らない人にもおすすめの本ですよ。

 

使いこなすにはまだまだ勉強不足ですね…【読書感想】現代の地政学/佐藤優

コロナの第二波がやってきてしまいましたね。

数も減っていたためこれは収束できるかなと期待していましたが、やはりなかなか難しいですね。

長期戦…といったところでしょうか。

 

そんな中で、外出しない趣味ということで早速読書に勤しむことに。

 

今回の本は、前に買ってはいたもののなかなか読む機会がなく積まれていた本w

いい読書機会になりました。

 

現代の地政学 (犀の教室)

現代の地政学 (犀の教室)

  • 作者:佐藤優
  • 発売日: 2016/07/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

なかなか、面白い本でしたよ。

ただ、内容というよりも地政学の概念が難しかったです。

 

地政学とは何かというと…

地政学のポイントは何かというと、「長い時間がたっても動かないもの」です。だから民族のような近代的なものは地政学には入りません。それから資源も入りません。石油は大昔からアラビア半島にあったけれど、地政学の基本要因ではありません。

 

ざっくりいうと、主に地理的な要素から世界の動きを学ぶ学問といったところでしょうか。

もちろん、地理的な要素だけだなく、他の要素も入ってきます。

地政学には地理の要素だけだなく、人種神話などの人種的な要素、宗教的な要素なども含まれます。地政学とはそういう学問なのです。ところが、いまは地理以外の要素は危なくてうかつに触れられない。タブーが多すぎる。

そういった観点から、今までの歴史の動きを解説してくれるのが本書になります。

それにしても、著者の佐藤氏の知識量に驚かされますね。

自分は世界史、地理の授業はあまり真面目に受けていなかったこともあり、ちょっと後悔しましたw

 

山の周辺地域を巨大な帝国が制圧して、自らの影響下に入れることは難しい

つまり、山を大半が占める国を侵略するのは難しいということ。

アメリカがアフガニスタンを平定できなかった理由をこのように本書ではあげており、なるほどなと思いました。

もちろん色々な観点での分析はあるかと思いますが、本書で述べれている他の実例を合わせて考えれば、この地政学的視点は納得感がありますね。

 

さて、日本はというと

日本にとって最大の地政学的要素は中国大陸と太平洋です。中国からアフリカまでつながるユーラシア大陸、マッキンダーがいうところの「世界島」と、太平洋に囲まれているというのが日本の地政学的な制約条件です。

海洋国家であり、大国中国が近いといったところが要因でしょうかね。

ちなみに世界史の代わりに日本史は好きだったので真面目に勉強していたのですが、このあたりの話は日本史の観点から聞いたことがある話もありました。

だからこそ、中国の動きは重要とも言えます。

また、アメリカと中国の2大巨大国に挟まれているというのも面白いですよね。

ただ、一方で世界史についてはあまり知識がないため、南北戦争と西南戦争のつながりはかなり面白かったです。

 

なお、地政学についてまとめると以下のような内容でしょう。

地政学的要因で一番重要な要因は地理です。とくにその中で重要なのは「山」です。これらの地政学的要因で説明できないようなことが出てきたときに、どういう文化的要因があるのかを考えること。文化的要因の中でも長いスパンが影響を与えて、地政学的な要因に限りなく近いことは何かということ、それが例えば人種や宗教のような概念になります。こうした長いスパンで影響を与える概念と比較的近代になってから起きた科学技術の進歩や、民族などの概念を一定程度分けて、相互に道的な分析をするというのが地政学の要です。

地理的な要素から分析していき、それで説明がつかないようなことがあれば人種や宗教のような概念などを考えていくということ。

実際にトランプ政権になって、「アメリカはアメリカのことだけやります」といった考え方になっていてこの辺りの見通しはさすがだなと。

ただ、米中関係が悪化していくのは予想外だったようで。

まあ、実際に米中関係が悪化している根本的な理由はイマイチわからない部分もあります。

本書にある通り、トランプさんの考え方だったら中国とうまく取引をして、アメリカ経済に有利になるように持っていく気がするんですがね…。

 

まあ、結論として地政学についてのざっくりとした定義は学べたものの、これを使いこなすにはまだ勉強が足りないなと実感しました(現状の分析とかができればと思ってやってみたのですがイマイチだったのでやめましたw)。

 ただ、地政学ってどんなものなんだろうと思っている人には入門書としておススメですよ。

 

 

MOOCは今後の教育革命となりうるか?【読書感想】ルポMOOC革命無料オンライン授業の衝撃

久しぶりのブログになってしまいました。

今回読んだのはこちら。

 

  

このコロナ禍において今回最も問題として上がってきたことの一つが「教育」の問題だったのではないかと。

各種教育関係機関だけでなく個人においても色々な人がYouTubeで「教育」に関わるものを発信しています。

もちろん、学校教育だけでなく、生涯学習においてもそうですね。

 

さて、そんな中でオンライン教育を一度頭の中で整理したいなと思い、読んだのが今回の本。

実際にはルポというところもあり、オンライン教育の現場の熱が伝わってきて、いい意味で意図しない熱さが伝わってきました。

 

 

 

1.MOOCとは

MOOCとはMassive Open Online Coursesの頭文字を繋げたもので、ムークと呼ばれています。

正直言うと、MOOCという言葉を知ったのはつい最近でした。

まあ、世界的にも2012年ごろからアメリカで始まったというところなので、結構前からあるんだなという印象でした。

 

MOOCの土台となった概念として「オープンエデュケーション」という動きがあります。

「オープンエデュケーション」とは、教材や講義ビデオをウェブ上で(無料)公開し、より多くの人が教育の機会をつかめるようにする取り組みのことを言います。

 

MOOCとオープンエデュケーションの違いは余り本書で厳密に使わけがされているわけではないですが、「オープンエデュケーション」はウェブ上で広く教育に関することを公開することであり、ムークはオンラインでの無料講義といったところでしょうか。

 

MOOCの何が凄いのか?

修了証が発行される

MOOCのすごい点の一つとしては、修了証が発行されるという点があります。 

ムーク以前のオンライン教育では、いくら学んでも、その努力と成果を第三者に示すことが難しかった。しかし、教授の名前と大学名が入った修了証であれば、就職活動で使える。―そんな期待がアメリカでは生まれていた。

これは、現在有料化していて企業の就職などに使用できるようにしているようです。

確かに、いくら学ぶのは自由だと言いながら、何かしら目的(就職や社内でのスキルの提示)があって学ぶわけだから、修了書が発行されるのはありがたいですよね。

結局、英検なんかもそれを学んだスキルの証明書なわけですから。

 

②ウェブ上のディスカッションフォーラムが凄い 

今の若者にはネットでの質疑にまったく抵抗がない。米国の生徒が勉強していてどこかでつまずいても、同級生が寝入っている米国時間の深夜3時ならだれにも質問できない。でもフォーラムに質問を書き込めば、昼間の地域、例えば日本から親切な誰かが答えてくれるのです。

確かに、不明な点があったら、いままではクラスの友人とかに聞いていたことも、いつでも解決できる。

しかも、こういったことに自主的に参加している意欲の高い学生であれば、より回答が早いでしょうしね。 

また、何より、ディスカッションフォーラムは担当教授によって管理されており、議論を活性化するために教授自身や大学院生らも参加することが多い。また、どの受講生が書き込んだのかの記録も残るため、試験の解答を教えるような不正は起こりにくい。

そして、こういった仕組化で回答正当性が担保されているところもさすがだなと。

 

③学習ビッグデータへの期待

エデックスはあらゆる種類のデータを回収している。それは膨大な量だ。一人ひとりの受講生がいつ講義ビデオを見始めたのか、いつ見終えたのか、彼らの回答の正誤、動画を見た時間など、すべてわかる。これらを分析し、どのように学んだ生徒がどのような成果を生んだのか、何が学習には重要なのか、よりよい教材にするにはどんな改編が必要なのかを知ることができるのだ。

これは、いわば学び方を新しく分析していくということでしょう。

確かに、学び方って確立されているようで確立されていない気がしますしね(実際に、英語学習の本なんて書店にたくさん置いてありますしw)。

自分の経験からも「知識」は確立されていますが、「学び方」というのが確立されていないのも教育のひとつの問題であるかと思います。

これがもとになって効果的な学び方がうまれてくるといいですよね。

 

 

2.世界の動き

2012年に一般に向けて提供されるようになったMOOC。その中で代表的なプラットフォームはいずれもアメリカに3つあります。

  • エデクッス(マサチューセッツ工科大学とハーバード大学が共同設立した非営利の教育機関)
  • コーセラ(ベンチャー企業)
  • ユダシティ (ベンチャー企業)

このコーセラ、ユダシティの凄いところは知識産業である教育機関の商品である「講座」を無料で提供すること。

 

本来、「講座」を「商品」として提供することで(一部、学歴もだけど)成り立っているビジネスモデルであるはずなのに、その「商品」を「無料」で提供することはかなり謎だなと。

 

このあたり、どのようなビジネスモデルなのかというと。

 

  1. 人材紹介業
  2. 「21世紀型教科書」としての販売
  3. 修了証の有料化

 

の3つがあげれられるのでしょう。

 

いずれも、3の修了証の有料化以外は全く新しいビジネスモデルですよね。

特に人材紹介業という部分はかなり納得感がありました。 

まあ、実際に日本企業にこういった考え方が根付いているかというと疑問点ではありますが…。

 

 

3.学校の授業はなくなるのか?

このままMOOCが発展していった場合に、学校の授業(特に大学)が不要になるのではないかとも思えます。

しかしながら、むしろ現状ではMOOCを利用したブレンドモデルを行っている教育機関も増えてきているらしいです。

 

ブレンドの具体的な方法は、「反転授業」や「反転学習」と呼ばれ、米国では大学だけでなく、小中学校や高校にも広がっている手法だ。学生はオンラインのビデオを利用して、従来は教室で受けていた「講義」を自宅で視聴し、自宅でしていた「練習問題」に教室で取り組むのだ。

 

確かに、この方法は画期的だなと思います。

実際に自分の経験から言っても通う公立学校の先生によって、教え方のうまい下手は必ずありますからね。

 

しかも、大体時間がかかるのは「解けない問題が出てきたとき」。

これを教えてもらえる時間を割けるのはいいことだと思います。

まあ、もちろん家庭によってネット環境や個人の集中力などが異なってくるのでクリアしていくべきハードルは高いと思いますが。

 

また、併せて教員の方々の事務作業が減ることで「教育」に専念できるのでないかと思います。

教育で最も重要な役割を担うのは教師だ。そして教師のすることで最も重要なのは生徒へのフィードバックだ。フィードバックとは、生徒一人ひとりの状況、弱点を把握し、足りないものを補うには、どんな学習が必要なのかを、本人にきちんと説明することだ。一斉講義では難しいが、反転授業であれば、フィードバックに費やす時間を確保できる。

まさに、これは教員でなければできないことでしょう。

 

また、公的な分野におけるこういった動き以外にも、「カーンアカデミー」や「まなびー」、「イーボード」といった民間でも動きが出てきていることも面白いです。 

 

今後、このようなブレンドモデルがどのように活かされていくか楽しみですね。 

 

 

4.まとめ

実は、この本を読んだ一番の感想としては「危機感」でしたw

自分の下の子達はこんな教育の受け方をするのかと…焦りますねw 

ただ、自分よりも下の子達の方が圧倒的に優秀である のは事実だからこそ、自分も負けないように色々なものを磨いていかないといけないなと思います。

 

ネットの世界がついに教育にも適用される時が来ましたね。

自分の予備校時代にはサテライトといった形で録画した授業を受けたりもしていたので、それのWeb版ということであれば全く違和感はありません。

ただ、これが一般的になると自主的に学ぼうとする人とそうでない人の格差は出てきてしまうかもしれないなぁと。

大人ならそれも仕方ないのですが、子供達にはどのように活かしていくか少し考えないといけないかもしれませんね。

いずれにせよ、新しい教育革命が起こることが楽しみです!