コロナの感染拡大がかなりなことになっていますね…。
病床がひっ迫している中で、成人式をはじめとした色々なイベントが中止になっています。
それに対して、菅政権の後手後手感がいなめません。
もちろん安倍政権の時と対応が何か変わっているとは思えないのですが、マスコミ対応と就任したタイミングの悪さといったところなのでしょうか。
また、安倍政権自体の「政治とカネ」の問題もかなり表立ってきていますし、なんだかなぁといったところです(自民党に代わる政権がないことが最も大きな問題の一つな気もしますが…)。
さて、そんな安倍政権に多大な影響を与えているだろうと思われるデービッドアトキンソン氏の「新・生産性立国論」を読みました。
いやー、勉強になりました。
目から鱗というか、政府が賃上げを行っている理由がよく分かりました。
それでは、以下感想です。
1.日本の直面している一番の問題は人口減少と少子高齢化
これはもうここ数年ずーっと言われてきていることですが、日本が直面している大問題はまさにこの2つ。
・人口減少
・少子高齢化
日本のほとんど問題がこの2つから派生しています。
これは国も各自治体も民間企業も全員がこれに対して頭を悩ませていることでしょう。
民間企業にとっては、人が減るってことはそれだけで消費者が減ってしまうし、ましてや少子高齢化で一番お金を稼いで使う人達が減ってしまう。
一方で、国や自治体は一番税金をおさめてくれる人達が減ってしまい、一番お金がかかる人達が増えてしまう(もちろん、お金がかかる人達はそれまで一番頑張って税金をおさめてくれていた世代です)。
ちなみに本書では、
GDPは絶対に維持しなければなりません。理由は2つあります。これから日本では人口が減りますが、高齢者の数はあまり減りません。高齢者自身が負担する医療費の水準が今と同じだとすると、数が減らないので、GDPが減れば、GDPに占める医療費の割合が高くなります。今後高齢者1人にかかる医療費はおそらくさらに増えるので、若い人の負担が一層重くなるのです。
2015年度の国民1人あたりの負担額は年間約93万円ですが、制度を変えずに人口が減っていくと、2060年度には約136万円まで増えます。
生産年齢人口で見ると、負担額は一層深刻です。生産年齢人口1人あたりの負担額は、同じ期間で約154万円から約268万円にまで急増します。就業率と収入を勘案すると、男性の負担はなんと約194万円から約338万円にまで、膨らむのです。
とあります。
いや、恐ろしいですね…2060年度というと自分は70代…少なくとも生産年齢からは外れていますが、自分の時代に今のような社会保障制度が維持されているとは甚だ想像しがたいですね…。
その上、その時の生産年齢の負担は今の1.5倍…もちろん単純計算ではいきませんが、手取りはいくらぐらいになるんでしょうかね。
かと言って、この社会保障制度が維持できなくなるということは、格差社会が拡大している中で、より弱者に対して厳しい国になっていくということです。
これはどうなんでしょう。
自分は日本以外の国に住んだことがないのでなんとも言えませんが、社会保障制度のレベルが下がると貧困のスパイラルが強くなり、治安の悪化に繋がる気がします。
2.解決策は「生産性の向上」
まずは「生産性」とは何かですが、生産性とは1人あたりのGDPを指します。
ちなみに購買力調整をした1人あたりのGDPが一般的な生産性の定義になります。
(恥ずかしいことに知りませんでした…)
また、一般的には生産性向上には以下のようなメリットがあります。
①労働者の生活水準の向上と、労働条件の向上
②年金基金と一般株主の配当利益の増加
③消費者が受け取る付加価値の向上
④環境への配慮の向上
⑤政府が格差社会緩和のために使う税収の増加
です(全然知りませんでした…w)。
そしてこれらの知識の上で、本書の主張のメインとなるのが「生産性の向上」です。
本書の主張をまとめると、
『社会保障制度を維持するためには今のGDPの水準を維持する必要があるが、GDPが人口×一人あたりの生産性で決まることから、人口減少の中でGDPを維持するには生産性をあげる必要がある。』
というところでしょう。
これはもっともですよね。
労働人口が少なくなる以上、生産性をあげて補っていく必要があります。
だからこそのAI等のICTの活用を国をあげて進めているのでしょう。
また、生産性を考える上で2つの混同しやすい言葉を説明しています。
1つ目が利益と生産性を混同しないこと。
生産性は収益性の指標ではありません。収益性だけを考えれば、人件費と設備投資を削れば、短期的には利益は増えます。しかし、そうするとその分だけ付加価値向上とイノベーションの機会が減るので、競争力と将来性が犠牲になり、いずれはその企業の業績に響いてきます。イノベーションによる収益性の向上と不健全なコスト削減は、まったく別物です。
2つ目が効率性と生産性を混同しないこと。
生産性は、効率性より広い概念です。簡単に言えば、生産性は使える資源をすべて総合的に考えて、どれだけ新たな価値が生み出せているかを測るものです。 一方、効率性はあくまでもある作業を、労力や時間、そして資源の無駄なくこなすことです。1日中、労力・時間・資源を使って、不良品を無駄なくつくり続けることも、「効率がいい」と表現することはできますが、売上にならない以上は、生産性はゼロです。 生産性のないもののことを、無駄と呼ぶのです。
これにはなるほどなーと思わされました。
生産性と聞くと「効率性をあげて利益を高める」と言われがちだなと。
実際に最初の会社の時は残業を申請が出来ず(雰囲気的な問題もですし、実際にそんなお達しが出ていたような気がします。)、新人で仕事が遅いのはわかるけど、なんで働いている分の残業が申請できないのか疑問でした。
今はその辺りも改善されているようですが。
結局、企業という血の通わない組織になると人件費を削って利益を出すことを厭わない経営者が増えるということなのでしょう(もちろん、売上が低いときは仕方ないですが)。
結果として生産性をあげることで、付加価値を向上させるサービスや製品を作ることで、賃金をあげていき、GDPをあげ、社会保障を維持していくこと。
とてもシンプルな答えで王道な答えですよね。
3.日本はなぜ生産性が向上しないのか
ちなみに日本の生産性が向上しなかった理由を本書では、「経営者が無能だから」と言い切っています(経営者の人が読んだら怒るだろうなw)。
まあ、確かに日本人労働者の質は世界第4位である以上、その労働者を使って最大限効果的な経営が出来ていないのは経営者にあると言っても仕方がないでしょう。
本書でもあるように優秀な人材に、その人がやるべきではない、レベルの低い仕事をさせていることも一つの原因でしょう(レベルの高い仕事を用意できないことも含めて経営ができていないということでしょう)。
もちろん、本書では経営者が無能でいられる理由なんかも書いてあり、なるほどなというところも多かったのですが。
なぜ日本の経営者は無能なのでしょうか。
有能な人が経営者になっているはずなので、経営者としての才能がないのか、経営者になったとたんに無能になるのか、経営者の勉強をしていないからなのか…難しいですね。
もちろん、有能な経営者の方々も多いのでしょうけど、なんとなーく昨今の政府と業界のズブズブな関係をみていると、経営者よりもヨイショがうまい人がなってるだけなのではないかと勘繰っでしまいますよね…。
あとは大胆な制度の見直しができないというのもあるかもしれません。
本書に書いてあるとおり、配偶者控除なんていうのは悪く言えば、税金も払わず制度にタダ乗りしているだけですし、これについては女性の社会進出を押しているのに何故配偶者控除を維持しているかは個人的には本当に謎でした。
まあ、自民党の重鎮の方々は女性の社会進出よりも昭和の女性は家を守るもの的な価値観でいるということを最近ニュースでみて、納得しましたがw
4.まとめ
長々と書いてしまいましたが、非常に勉強になる一方で耳が痛ーい内容でした。
また当時に今から変えていかないと、日本の衰退を止めるのに手遅れになるという怖さにもかられました。
ただ、コロナ渦での政府の対応や最近の政治と金の癒着をみると本当に大丈夫かなと心配になります。
でも、まずは自分の仕事の生産性をあげていくことからはじめないといけないですね。
会社を経営したり組織をマネジメントする立場にある人はもちろん、若い人たちにも読んでほしいオススメの一冊でした。